なんとなく具合が悪いかな、と思ったのは、結婚式から一カ月ほどたった頃だった。
降り続いた雨がようやく止んで、暑い夏が訪れた。急に気温が上がったせいで、体が調子を狂わせたのかもしれない。その日は朝からソファに座りこんで、立ち上がれなかった。
「本当に大丈夫か?」
「うん平気。ちょっと休めば良くなると思う」
「会社へは?」
「連絡入れてる」
夏バテかな、なんて言ってぐったりしていると、こなつが心配そうに体をすり寄せてくる。
「こなつも心配してくれるの? ありがとう」
力の入らない指先で顎をくすぐると、ゴロゴロと喉を鳴らした。
仕事に出かけた拓海を見送って、またソファーに横になる。ベッドに入った方がいいのだろうけれど、そこまで移動する気力すらない。
もう私は諦めて、だらしない姿でソファーに伸びていた。
チャイムの音が聞こえた気がして目が覚めた。
時計を見るととっくにお昼を過ぎていて、そんなに長く寝ていたのかと驚いてしまう。
「そうだ、お客さま」
なんとか立ち上がってインターフォンを覗くと、佐奈さんが立っていた。
「拓海に頼まれたの。心配だから様子を見てきてほしいって」
佐奈さんに言われてスマホを見てみると、拓海からたくさんメッセージと電話が入っている。


