お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~


「夏美、大丈夫? 疲れてない」

「疲れてないけど、胸がいっぱいで……」

 感極まってこぼれた涙を、拓海がハンカチで拭ってくれる。

「ありがとう」

 そんなことをしていると「式の最中にいちゃいちゃしてんじゃねーぞー」とどこからかヤジが飛んで来た。会場のみんなが、ドッと笑う。


 いいじゃない、だって幸せなんだもの。

 私にも、こんな日が訪れるなんて思いもしなかった。


「ありがとう。大好き、拓海」

「だからさ、こういうとこでそういうこと……」


 案外ストレートな言葉に拓海が弱いことも、私だけは知っている。

 そして今まで知らなかった拓海の一面をひとつ、またひとつと知っていっては、彼への愛しさはさらに増していくのだろう。