親族や友人だけの和やかなムードから一変、披露宴は挙式以上に緊張した。
拓海の仕事仲間でありライバルでもある職場の人たち、地位も高いであろう招待客の面々。この人たちの前で、絶対に失敗はできない。拓海に恥をかかせるわけにはいかないと思うと、緊張で顔がこわばった。
「夏美、緊張しすぎ」
「だ、だって」
「花嫁さんは笑ってなきゃ。みんなに幸せを分けてあげるんだよ」
そんなこと言われても、緊張が解けないんだもの。ぎくしゃくとした笑みを浮かべていると、拓海が客席の一画に陣取るグループに向かって、おいでおいでと手招きをした。
「祖父江、清家おめでとーって、もうどっちも祖父江か!」
拓海が呼んでくれたのは、大学のサークルのメンバーだった。社会に出て世間に揉まれ、以前より大人びた顔になっているけれど、こうして集まれば一気にあの頃に戻ってしまう。
みんな次々に拓海と乾杯をし、全員で集まって記念写真を取った。
拓海はもちろん、清家の家族や拓海の家族、会社の人たちに友人たち、それに、聖司さんも。これまで関わってきた人たちすべてに私はこんなにも支えてもらっていた。
これからは拓海とふたりで、みんなに恩返しをしていきたい。


