「よさそうな人だったじゃない祖父江さん。弁護士だし、見た目も素敵だし、爽やかだし。なんと言っても、あの祖父江法律事務所のご子息なんでしょう? アメリカから帰って早速活躍してるって、私も小耳に挟んだわよ」
出された料理をあらかた平らげ、ジョッキを片手に綾さんが言う。
「しかも彼、うちの顧問弁護士に収まりそうよ。さっさと話まとめちゃって、相当やり手なんじゃないの」
「おじさまも、拓海のこと相当気に入ってたみたいですもんね」
私が席を外した後に、そういう話になったのか。あの短時間で、仕事の話をまとめるなんてさすがだ。
「学生時代から、いわゆるいいヤツなんですよね、拓海って……」
拓海は昔から、誰から見ても非の打ち所のない人だった。今でもきっと、誰にでも公平で誠実なところは、変わっていないのだろう。
そんな拓海だからこそ、私に対しても、なんのわだかまりも見せず自然な態度で接してくれたのだろうし、おじさまも一目で気に入って、顧問弁護士になんてことになったのだろう。
でも、時間が経ったからといって、私が彼にぶつけた言葉の数々を、なかったことにできるわけではない。


