「もうさ、任せられるところは任せよう。夏美も仕事してるんだし、式の準備ばかりにかかりっきりってわけにもいかないだろ」

「そうだね。そうしてくれたら助かるかも」

 おそらく湊人さんたち並のゲストが参列するはずなのだ。なんでもかんでも自分たちの手で、というのは難しいだろう。

「夏美は、父さんたちに指定された式場でよかったのか?」

 披露宴を行うのは、湊人さんたちが式を挙げたのと同じホテルでと、拓海のご両親から言われている。

「ちょっと私には敷居が高い気もするけど、でも全然かまわないよ」

 うちはともかく、祖父江家には仕事上の絡みなんかもあるんだろうし、なにより湊人さんたちの式が素敵だったので、そこは異存はない。

「じゃあ逆に、これだけは譲れないってところはあるか?」

「どうしてもやりたいこと?」

「そうだな。お色直しの回数とか、引き出物とか」

「うーん……」

 頭を捻って考えてみたけれど、元々結婚願望もそんなになかった人間なのだ。特にこれといって希望もない。

「ないの?」

「そうだね、特には……」

 こうして拓海と結婚式を挙げられるだけで夢のようだし、ウエディングドレスに袖を通せるだけでも十分なんじゃないかなとも思う。