「榊社長はじめまして、祖父江 拓海と申します。お会いできて光栄です」
低く響く声、仕立ての良い濃紺のスーツ姿、胸元に光る金バッジ。先日気まずく別れたばかりの拓海が、眩しいばかりの笑顔で立っていた。声だけでなく、相変わらず見目もよい。社長は彼のイケメンぶりに圧倒されているようだ。
「いや、これは驚いた。弁護士だと聞いていたが、俳優の間違いじゃないのかね? 大した男前だ」
「ははは、ありがとうございます」
おじさまからの率直な感想に、拓海が照れた笑みを見せる。
「ほほう、これは……」
謙虚さを覗かせる彼のようすに、おじさまは好印象を抱いたようだった。
「ご足労いただき申し訳ない、私が榊です。先日は、うちの清家くんを助けていただいたそうで。ありがとうございました」
拓海とがっちりと握手を交わし、社長が私に目配せをする。早くおまえもお礼を言えと言いたいのだろう。
「……先日はありがとう。助かりました」
「無事でよかったよ。その後、何もない?」
「うん。おじさまが相手の方ときちんと話をつけてくださったから……」
私たちの会話を聞いて、おじさまがハタと動きをとめる。
「……なんだ。君たちは、知り合いなのか?」


