「悪かったよ……」

「そうですよ、食事だなんてだましてお見合いさせるなんて!」

「だって、いくら言っても夏美ちゃんが断るから……」

「だからって、嘘はダメです。嘘は」

「わかった。もうしないよ」

 お見合いを持ちかけるたびに私が蹴ってしまうので、おじさまはあんな強硬手段に出たのだ。
それはわかるけれど、どんな理由があろうと、嘘をつくのはいけないと思う。


「それはそうと、ひどい目に遭わせてすまなかったね。けがはなかったかい」

「幸い、間に入ってくれた方がいたので」

 週末の、加藤さんとのお見合いの顛末を報告すると、普段の温厚さが嘘のように、おじさまは腹を立てていた。

「よくよく調べてみたら、彼はあのカッとしやすい性格が災いして、これまで女性に逃げられてばかりいたらしいな。しかし職場の上司に、30を過ぎても独身というのは外聞が悪いと言われて、焦って見合いをしたらしい」

「そうだったんですか……」

 男性も、そういった周囲からの突き上げがあるんだな。大変だなとは思うけれど、彼に同情することはできない。

「信用のできる相手からの紹介だからとよく調べなかった私が悪い。怖い目に遭わせてすまなかったね。それで、次の見合いなんだが……」

「……おじさま?」

 あんなことがあったのに、もう次のお見合い? さすがに腹が立って、私は厳しい口調でおじさまを呼び止めた。