たとえ、形だけの夫婦とはいえ、忙しい拓海のことを放っておくわけにもいかない。

 拓海は私に『世話をして欲しくて結婚したんじゃない』とは言っていたけれど、なにより、私自身が彼に寄り添いたいと思っている。

 ……でも便宜上の妻でしかない私に、そんな資格があるのかな。その不安は、変わらず私に付きまとっている。


 結局拓海は、家に着くまで一言もしゃべらなかった。なにか考え事をしていたのか、ずっと思い詰めたような顔をしていた。



「遅くなっちゃったな。なに頼む?」

 家に着くとすぐ、拓海はデリバリーのメニューを漁り始めた。

「久々だったのに、悪かったな」

 食事に行くのをやめたことを気にしているのだ。たしかに、楽しみにしていたけれど。

「私も疲れてたから」

 そう言って微笑むと、「次は絶対行こうな」と言ってくれた。


「拓海、お腹空いてる?」

 冷蔵庫を開け中身を確認する。お豆腐と薬味が少々、夏野菜も数種類ある。

「昼飯が遅かったし、そんなに空いてない」

「よかったら家にあるもので私がパッと作るよ。なにか軽くつまめるものと、お茶づけとかでもいい?」

 材料を取り出して振り返ると、やけに暗い目をした拓海と目が合った。