「そうしているうちにタイトルを取って、メディア関連の仕事まで増えてしまって、まったく余裕がなくなったんだ。今さらこんなこと言ったって言い訳でしかないんだが……」
「そんな、気にしないでください。私のことを気にかけてくださっただけで十分ですから」
「教室を閉じてしまったことも、残念に思っているよ。君なら続けてさえいれば、いずれ再建できたと思う」
聖司さんがこんなふうに思っていてくれたなんて、全然思っていなかった。
……恥ずかしい。あの頃の私は、自分を不甲斐なく思うあまり、聖司さんの人柄さえ疑ってしまうほど、卑屈になっていたのかもしれない。
でも、そんなわけない。聖司さんは決して手を抜かず、私を見くびることもなく、いつだって真摯に私との対局に挑んでくれてたのに。
「再開を目指すなら、いつでも協力するよ」
「聖司さ……」
「その必要はありませんよ」
そのとき、私の肩に温かな手が触れた。
「彼女が助けを必要としたときに、真っ先に手を差し伸べるのは夫である私です」
「拓海……」
いつの間にここへ来たのだろう。まったく気がついてなかった。


