お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~


 イベントは盛況のうちに幕を閉じた。

「みなさんお疲れさまでした。今日は園田名人主催で打ち上げもありますので、お時間ある方はぜひ参加してくださいねー」

 協会のスタッフが、今日のイベントに携わった人たちに声をかけて回っている。


「清家さんこういう場にいらっしゃるのお久しぶりですね。このあと参加されませんか?」

 昔お世話になった先生が、私の姿を見かけて声をかけてくれた。

「先生お久しぶりです。申し訳ないんですけど、今日は用事があって」

「ああ、それは残念。また参加してくださいよ」

「……ありがとうございます」

 じゃあまたね、と私の肩を叩いて、先生は去って行った。以前と変わらない態度で接してくれる先生に、心がじわっとあたたかくなった。


 ロッカーから荷物を取り出して、スマホを確認してみた。拓海からの連絡はまだ入っていない。

 イベントは予定より一時間ほど早く終わってしまった。拓海にはイベントの終了時刻を伝えていたから、きっとまだ仕事をしているのだろう。

 邪魔しちゃうかなと思いつつ、一応拓海にメッセージを打ってみる。メッセージに気づいたとしても、拓海がこの会場に到着するまでは、まだ時間がかかるだろう。

 そこで、会場のロビー内にあった喫茶店で、時間を潰すことにした。


 アイスコーヒーを頼み、窓際のカウンター席に座った。

 聖司さんの出待ちでもしているのかもしれない。会場の外には、まだ大勢の親子連れやお客さんの姿が見えた。