一瞬のうちに、心が奪われる。



「ーーき」



無意識のうちに声に出てしまっていた。



「は?」



先輩には、私の声が聞こえなかったらしい。

仕方がないので、もう一度言ってあげよう。



「好きですっ!先輩の名前を教えてください」



私は、聞こえる声で言った。


教室に響き渡るくらい大きく、盛大にーー。


突然の大声告白に、プリントと向き合っていた人達全員が、私たちの方を向いていた。



「......」



何も言わず、固まっている先輩を私は見つめ続ける。


こんな気持ち、初めてだーー。

これが、いわゆる、ひとめぼれってやつだろう。


キラキラと視界が輝いて見える。

まるで、エフェクトがかかったみたいに......。


きっと、開いた口からは甘い言葉が出てくるに違いない。


なのにーー。



「バカに教える名前なんてない」



そう、バッサリと言い捨てて先輩は教室を後にした。

夢みたいな時間は一瞬で、先輩の居ない私の視界は、殺風景に戻る。