一瞬だったはずなのに、私にはスローモーションに感じた。
思考回路が止まり、身体が固まる。
「フッ、さっきのお返しだ」
ニヤッと笑う悠真先輩は、してやったり顔をしている。
やられたーー。
たぶん、私がさっき抱きついたことのお返しななのだろう。
キスをしてくれるなんて、倍以上のもので返されてしまった。
恥ずかしさはもちろんあるけれど、こんなファーストキスも悪くないと思う。
きっと、私しかこんな経験をしないだろう。
ずっと片思いをしていて、やっと付き合えることになり、そして、その大好きな悠真先輩と、こんなやり取りができるのだから。
「じゃあな、また月曜日に」
悠真先輩はそう言って、直ぐに背を向けた。
ーーまるで、恥ずかしさを隠すように......。
案の定、耳が赤くなっていたけれど、見なかったことにしておく。
私は、帰っていくその背中を、幸せ感じながら見えなくなるまで眺めていた。



