私は、サドルを掴んでいた手を離して、悠真先輩の背中にぎゅっと抱きついてみた。
くっついた途端、ビクッと震えた先輩。
「ばっ......離れろ!」
不意をつかれたらしい悠真先輩は、少しだけ自転車がグラッと揺れたけれど、直ぐに立て直した。
だって、暖かそうだったんだもん。
つい、手が伸びてしまった。
さすがに、いきなり過ぎたかーーと反省をして、離れようとした時、悠真先輩が耳まで赤くなっている事に気がついた。
もしかして、今のは照れ隠し......?
自転車を漕いでいるせいなのか、頑なにこっちは見てくれないけれど、嫌がっている訳では無いのが分かる。それならーー。
「いやです」
私はわざとそう言って、更にぎゅっと腕に力を入れた。
今まで、私ばっかり好きで振り回されていたのだから、先輩も私に振り回されて欲しい。
「っ......」
それ以降、悠真先輩は離れろなんて言わなかった。



