反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 何人いるのかはわからないけれど、相当な人数がいるはずだ。それなりに給料をもらえる仕事に皆がついているなら少しずつお金を出し合えば、お腹いっぱいとまではいかなくても、もう少し栄養状態が改善できるようになるのではないだろうか。
 兵が頭を横に振る。
「院長先生に禁止されているんです。食べ物は、一度味を覚えると飢えがひどくなるからと。寄付をするなら、紙やインクや本、それから訓練用の剣や弓、そして大人になって孤児院を出た時に着る服と、就職して生活が安定するまでの手助けをと……」
 そうか……。
 食べるものだけが支援じゃないものね。

 宿に戻り、目の前のことをこなしている間も、頭に浮かぶのは、やせ細った子供たちの姿。
 日本で子供たちの貧困が問題になることはあっても、あれほど痩せた子供の姿を見ることなどなかった。
 いいや、むしろ、日本の貧困問題は、衣食住を何とかしてあげようという方向に向いていて、大人になったときに困らない知識や技術を与えようというところまで行っていないように思う。子供食堂で食べさせるのではなく、子供食堂で料理を教える、将来料理人になれるくらいに……とはしない。食べさせて終わりだ。そう考えると、あの孤児院は、日本よりも進んでいるのかもしれない。
 ……なんて自分を納得させようと思っても……思っても。
 無理だよ。
 無理だよ。目に焼き付いて離れない。なんでどうして。
 子供たちが飢えに苦しまなくちゃいけないの?いやだ、無理だ。忘れるなんてできない。
 ぷくぷくとかわいいヨリトのほっぺ。柔らかなヨリトの体。
「ああああーーっ」
「頼子、頼子っ!」
 はっ。
 リュートさんの声で目が覚める。
「大丈夫か?ひどくうなされていたが……」
 気がつけば、汗でびっしょりだ。
「怖い……」
 怖い夢を見た。
「大丈夫だ。何も怖くない」
 リュートさんが私の背中をさする。
「怖い、怖い……」
 ヨリトがみるみると痩せていき、そして、呼吸が浅くなり、止まる夢を見た。
 大きな声でお腹がすいたと泣き出したヨリト。食べるものがなく、みるみる痩せていき……泣き声が次第に小さくなり、そして、泣くことすらできなくなったヨリト。
 ぽろぽろと涙が落ちる。
 いやだ。
 怖い。
 怖い。