反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 黙っていると、辛くて、涙がこぼれそうになる。
「なぁ、ヨリコ、さっきのあの……いい男誰だ?」
 いい男?白ちゃんのことかな?
 私の中でのいい男ランキングでは、リュークさんのが上なんだけど。容姿だけランキングなら、まぁ白ちゃんのが上かもしれないけど。トータルは圧倒的にリュークさんです。言わないけど。
「えーっと」
 白魔導士は正体を隠している存在らしいから、言うわけにはいかない。
 なんと説明すればいいのか。
「ヨリトがかわいいねって……その」
 嘘じゃない。白ちゃんは、ヨリトにでれてたもの。
「子供をだしにしたナンパかっ」
 ナンパ?
 リュートさんが怒っている。
 いやいや、声かけたのむしろ私の方だし。冷静に考えて、白ちゃんはナンパするようなタイプじゃないし。
 それでもって……私、自慢じゃないけど道を聞かれることはあっても、ナンパされることがないタイプです。
 ……そもそも、子持ちナンパなんて普通しないんじゃない?
「いえ、違うと思う……」
「まさか、わかってない?日本街の女性ってめちゃくちゃ人気あるんだ」
 へ?日本街の女性は人気?大和なでしこイメージがあるとか?いやいや、ないない。別に誰かの視線を強烈に感じるようなこともないし。
 なんと答えたらいいのか分からず、へらっと笑ってごまかす。
 いや、とりあえず、白ちゃんにはナンパ男の疑いがかかってしまったけれど、なんか誤魔化せたようなのでよしとしましょう。
「俺は、頼子が日本街出身だから好きなわけじゃないから」
 ん?
 リュートさん、今、何て言いました?
 王都の最北端。街を覆う壁に、人が一人やっと通れるくらいの小さな扉がついている。
 扉の前には兵が二人立っていた。自由に行き来ができない?と、一瞬身構えたものの、兵の一人がさっと扉を開いて通してくれた。
 門をくぐる時に、兵に睨み付けられた。
 憎悪のこもった目がこちらに向いている。
 何も言いはしないけれど、ヨリトを孤児院へ連れて行くことを責められているような気がした。
 でも、仕方がないでしょう。私の子じゃないんだし。
 仕方がないでしょう、私はずっといっしょにいていられないんだし。
 仕方ないでしょう、こうするしかないんだから!
 仕方が、ない……。
「頼子、ついたぞ」
 10分ほど歩いた場所に、孤児院はあった。