反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 牢屋にいたのは6人。男ばかりだ。
「女だ、女だぞ、こっち来いよっ!かわいがってやる」
 牢から手が伸びる。
 つかまってもなお、反省はないのだろうか。
「出せ、俺が何をしたってんだ!ちょっと2、3人の首をはねてやっただけだろう!くそっ、あいつらが悪いんだ、俺に金を貸さないからっ」
 ……。
 なんだか、気分が悪くなってきた。
 自分勝手でしたことへの反省もない。危ない危ない。こんな人たちの声をヨリトに聞かせるところだった。
「大丈夫ですか?顔色が悪い」
 地上に戻り、マスクを取って白ちゃんに返す。
「大丈夫です。白ちゃん、連れてきてくれてありがとう。さっさと出ましょう……」
 建物の外に出ると、ヨリトの手を取って白ちゃんに向かってバイバイ。
「あーいー」
 バイバイするヨリトを名残惜しそうに見つめる白ちゃん。
「誰だ、今の男」
 へ?
「うわっ」
 振り返って目に飛び込んできたのは、3mはあろうかという巨大な熊。
 熊っ!を、背負ったリュートさんだ。
「ああ、すまん。驚かせた」
「ふえっ、ふえっ、あーーーー」
 あ、ヨリトが泣き出した。
「よしよし、怖いね、大丈夫、よしよし」
「す、すまん、ヨリト、あーっと、ちょっとこれ、売ってくる」
 3mはあろうかという巨大な熊。重さ……何百キロあるんだろう。それを軽々と背負ってヨリトさんは買い取ってもらえる場所へと運んで行った。
 買い取ってくれる場所って、どこ?肉屋?それともゲームっぽくギルドみたいなのがあるのかな?
「じゃぁ、行こうか」
 リュートさんは10分ほどで戻ってきた。
「行くって?」
 どこへと言おうとして、リュートさんが北に視線を向けたことに気が付いた。
 王都の北。壁の外。
 孤児院のある方向だ。リュートさんも誰かに孤児院のある場所を聞いたのかもしれない。
「そう……ね……」
 ヨリトっ。
 もう、すぐ……お別れなんだ。
 腕の中の温かく柔らかいこの感触。
 ヨリト、ううん。本当の名前は何かわからないけど……。

「もしかすると、両親が捨てたことを後悔して……孤児院に探しに行っているかもしれないし……」
 リュートさんがぼそりとつぶやいた。
「そうだね……」
 そうならいい。
 黙って、北へと足を進める。
「だーだ、だー」
 何もわからないヨリトだけが無邪気に声を上げる。