反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 孤児に石を投げつけるような差別があるわけじゃないんだ。
「王都の孤児は、近隣の村や町からも集められてるそうだからねぇ。街の空気になじめない子のためでもあるのかもねぇ」
 なるほど。孤児なんか見たくないからと、外に出されたわけではないんだ。いろいろな事情を考えた末なんだね。
 洗濯を終えてマチルダさんのところへ行くと、リュートさんがいなかった。
「ああ、ヨリコさんが熊が美味しいって言ったから、また食べさせてあげたいと言って熊狩りに行ったわよ。愛されてるわね」
 マチルダさんがにやにやとした顔を向ける。
「あ、愛されてるって……っ、そ、そんなんじゃ……」
 リュートさん、いい人だから、きっと、ヨリトの世話をしてくれた私に感謝して何か恩返しがしたいだけだと……。
「ふふっ。だって、熊が食べさせたいからって、危険を冒して狩りに出かけるんだよ?買いに行くのとじゃ全然違うじゃない」
 危険?
「危険なの?」
 さーっと青ざめる。
「そりゃ、熊だから。罠を張って仕留めるんじゃなきゃ、遭遇したらまず逃げたほうがいいような動物よね?」
 大丈夫なのかな、リュートさん。心臓がバクバクとしてきた。もし、リュートさんに何かあったらどうしよう。
 ああ、そうだ、怪我なら、怪我なら私、何とかしてあげられるんだ。
 いや、でもその怪我を誰に肩代わりさせるの?
 そうだ!こんなときは、犯罪者よっ!
「マチルダさん、なんか悪人ってどこにいるかな?」
「悪人?何?突然……」
 はい、突然の質問だよね。
「ほら、人殺しとか、えーっと、盗賊とか、なんかそういう悪人……」
 ふふふと、マチルダさんが笑った。
「大丈夫よ。王都の治安はいいのよ。騎士も警備兵も、それから街の治安を守る警邏も皆優秀だから」
 いや、そうじゃなくて、私が知りたいのは、牢屋や監獄みたいな……って、普通の人がどこにあるのか知るわけないか。警邏の人に聞けばいいのかな。取りあえず、何人かの顔見て覚えておきたい。誰かを助けようと思ったって、私の能力なんて怪我や病気を誰かに移すことだできるだけ。罪のない人に移すことはしたくない。……それが命にかかわるようなものであればなおさら。誰かを助けるために誰かを犠牲になんて……。って思っていたって、親しい人を助けたいと思ったら、誰かに飛ばしちゃうかもしれない。