反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 ヨリトが髪の毛を引っ張るので痛いっの、男に飛んでけ。あ、男はそこらへん剥げてますよ。剥げてるのに髪の毛を引っ張られたような痛みを感じるのって、不気味かもしれませんねぇ。
「うっ、うわぁーっ」
 必死で頭の周辺を手で振り払う。
 呪いの影なんて嘘ですよ。
「ああ、影が濃くなってきたみたいですよ、目の方に移動したみたいです。気を付けて」
 ヨリトが私の目に手を伸ばして暴れ始めた。
 いつもなら避けるんですが、えーい。ぶすり。流石に目はつむりました。ですが、瞼の上から突かれても痛いですよねぇ。
「うっ」
 男が目を手で押さえた。
「ああ、影が次第に濃くなってきているみたいですけれど……。赤ちゃんの泣き声を聞くたびにいろいろな箇所に痛みを覚え、しまいには命にかかわる危険も」
 男が床に両膝をついた。
「うわー、どうしたらいいんだっ、死にたくない、死にたくないっ」
「赤ちゃんが泣く場所には近づかないようにすることですね」
 もう、ここには来るな!作戦ですよ。
「そんな、どうしたらいいんだ、近づくなと言っても、隣の家からは始終聞こえてくるというのに……」
 そうだったんですね。それはさすがに、飲み食いするときくらい静かな場所でと望んでも仕方がないかもしれないです……が、それと無銭飲食は話が別です! それに、母親はその泣き声から24時間逃げられないんですよ。どうして、その母親を責めるような言葉を吐くのか。
「うるせー、黙らせろ!と、思っていませんか?でも、赤ちゃんは泣くのが仕事ですし、赤ちゃんは生きるために泣きます。あなたが死にそうなときに助けてくれというのと同じです。助けを呼ぶなと言っているようなもの。つまり、赤ちゃんに死ねといっているのと同義なのですよ?だから、呪われて当然なのです。呪いをときたければ……泣いている赤ちゃんの声を、生きるために頑張っているなと応援してあげてください。そして、うるせー黙れという人間に、伝えてください。うるさいのはお前の方だと。赤ちゃんは黙れませんが、大人なら黙れますよね?それとも、赤ちゃんと同じで、コントロールできませんか?……と」
 うーん。ちと嫌味が入ったかな。
 反省反省。

 この男の人も、四六時中赤ちゃんの泣き声を聞いて睡眠不足だったのかもしれないし、酒が入って日頃のうっぷんが噴出しちゃっただけかもしれないし。