反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 10年前というと勇者が召喚されたときってことだよね。見に行ってたんだ。
「そうか、賢者ももうすぐ70歳か。すっかりおじいちゃんかな。死ぬ前に会いに行きたいな」
 リュートさんのつぶやきに思わず口を挟む。
「私も、会ってみたいです!」
 勢いが良すぎたのか、リュートさんがびっくりした目をする。
「あ、いや、その、亡くなった父と同じその血を持つ日本人ですよね?ちょうど父と同じくらいの年ですし……えーっと、日本のこともいろいろ教えてもらいたいとか、その……」
「ああ、そうだね。そういう理由ならもしかすると賢者も会ってくれるかもしれない」
 へ?

「そうだな、お前たちならあってもらえるかもしれないなぁ。賢者ってあれだろう?山にこもっちゃって、人と会わない生活してるって。仙人みたいな生活とか」
「そうなんですか?」
 おじさんもこちらの会話にも耳を傾けていたのか、話かけられた。
「あー、知らなかったんか?有名な話だぞ。賢者の叡智をいただこうと人々が群がり、嫌になって山にこもったっていう。西国の王すら1年の1度新年の儀にしか会うことができないらしい」
「それから、ときどき日本街から食材を運ばせてるらしい。お前らなら、日本街の人間っていえばあってくれるかもしれないな。賢者がどんな顔してたか教えてくれよ」
 日本街の人間か……。
「だーうー」
 ヨリトがバンバンと机をたたく。
「一緒に、行くか?」
 一緒に……?
 いいの?
「だーだっ」
 ペチペチぺ地と私のスプーンを持った手をたたくヨリト。
「あ、はいはい。お口の周り見せて。うん、赤くなってないね、かぶれてもないし、お肌もすべすべぷつぷつしてないし、呼吸も平気ね。じゃぁ、いただきますしようね」
 と、よく考えたら、最悪アレルギーで苦しんだら、白Bに飛ばそう……お城ならお医者さんいるから何とかしてくれるでしょう。立場のある人間だし、ほっとかれることはないよね。
「どうぞ」
 ぶぶぶっ。うぱっ。と、ときどきスプーンのスープを吹き飛ばしながら少しずつスープを飲んでいくヨリト。
 先に食事を終えたリュートさんが、両手を差し出す。
「代わろう」
 ふっと笑みが漏れる。
「ありがとう。リュートさんは頼りになります」