反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

「おいおい、そんな水まで使わなくても、井戸までちょいと行けば……」
「灰汁というんです。灰を溶かした上澄みの水。これで洗濯すると汚れがよく落ちるんです」
 ……たぶん。小のおむつは水だけで洗って、汚れ物は灰汁で洗濯。つけ置きあらいにするために、先に水洗いのおむつを。
 と、いろいろと説明しながらご主人と洗濯をしていく。
「はー、こりゃ大変だ。ここで洗うなら、シーツも洗えるし、宿の営業も再開できるかと思ったが、そうもいかなさそうだな……。おむつだけでやっとだ」
 ご主人がため息をついた。
 一人分のおむつでも大量なのに二人分となると……ねぇ……。
「おう、こりゃいいな。油のシミも前よりずっときれいになってるぞ」
 灰汁の効果があったみたいです。ほっとする。石鹸も作れたらいいんだけど、さすがに作り方はわからない。
 あ、そうだ。確認しておかないと。

「あの、それでこの子と3人で宿泊すると、宿泊費はいくらですか?」
 泊めてもらえないと困る。
「馬鹿言っちゃいけねぇ!部屋の掃除もシーツの洗濯も自分たちでしてくれるんだろう?それに、アンナの手伝いもしてもらって、洗濯まで手伝ってもらって、水汲みもしてくれて、これで金までとったら、それこそ、こいつらに顔向けできねぇよ」
 と、ご主人が背中の赤ちゃんを揺らした。
「あ、いやでも、こちらこそ、泊めてもらえるだけでありがたくて、もしかするとこの子がそそうしちゃうかもしれませんし、それにアンナさんには母乳を分けていただきますし……」
「ここの数倍高い宿に泊まろうと思っていたんだ。断られたが。だから、断られないだけで、それ以上の価値はあるんだ。遠慮なく宿泊費を取ってくれ」
 リュートさんが水汲みを終えて戻ってきた。水瓶の一つを、食堂ではなく裏庭に運んでくる。
 水を使いやすいようにと気を使ってくれたのだろう。
 ご主人が困った表情を浮かべる。
「じゃぁ、うちの食堂でたくさん飲んで食べて売り上げに貢献してくれ。それで宿泊費はチャラ。その代わり、水が必要でも、お湯が必要でも、宿として何のサービスも出来ないから、自分たちで用意してくれるか?」
 それじゃぁ、なんか、私たちが得しすぎない?
「自分たちに必要な物は自分たちで用意しますけど……何か、他にも手伝わせてください」
 ご主人が笑った。