反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 ハルヤさんの言葉を思い出す。そうか。誰かに何かの条件で頼むことはあるんだ。商売なら、遠慮なく頼むことも出来そうだけど、周りの人に、いくらギブアンドテイクでお願いするとしても繰り返し頼むのは心苦しいよね。
「アンナさん、母乳の出はいい方ですか?2人分に足りてます?あまりそうですか?」
 泣いているアンナさんへの声かけがこれってどうなのかと自分自身でも思うんだけど。たぶん、泣いたことで少しすっきりしただろうし。疲れは飛ばしたし、もう、うじうじするより動いた方がいいと思ったんだよね。
「はい、足りていると思いますし、最近は離乳食も食べさせるようになったので、もっと飲んでくれてもいいのにと思うことは……」
 ああ。やっぱりだ。
 食事だけはしっかり食べているようだし、双子の赤ちゃんはもう、これでもかっていうくらいぷっくりふくふくしてて、おててもあんよもボンレスハムなので、母乳の出はいいのかなと思った通りだ。
「じゃ、お願いします!ヨリトに分けてくださいっ!この子、母親がいないんですっ!」
 と、ヨリトをアンナさんに差し出す。
「え?あなたが母親じゃないの?」
 親子に見えました?
 髪色とか全然違うし、顔も似てないと思うけれど、親子に、見えました?
「じゃ、お礼に洗濯させてくださいっ!」
 と、洗濯ものを一山抱えて部屋を出る。
 食堂の調理場にリュートさんとご主人がいた。もうリュートさん戻って来たんだ。早いなぁ。
「頼子、何をするんだ?」
 リュートさんは、水瓶を抱えている。
「リュートさんこそ、水汲みですか?」
「俺たちが宿泊するとなると、水も余分に使うだろうからな。今は人手が足りないだろうし、自分たちでできることはさせてもらおうかと」
 そっか。
 よく見れば、水ガメが5つも並んでいる。
 ん?
 水ガメが5つも?
「食堂で使うのは、どれだけなんですか?」
 私の質問に宿のご主人兼食堂の店長というか料理長が答えた。
「1つ半くらいだな。昼の営業もすれば3つ。残り2つは宿用だよ」
「今は瓶2つしか使ってないってことですか?井戸まではどれくらいの距離?」
「家からは近いよ。じゃなきゃ毎日水ガメ5つもいっぱいにできなかっただろうよ。出て南側見れば見えるよ」
 近い!そうか!それならば!