反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

「リュートさん、マチルダさんのところに置きっぱなしになっている荷物をお願いしてもいいですか?おむつがそこに入ってるので。あと、マチルダさんにはここの場所を伝えて、また後で行きますと。あ、干した服は乾いていたら持ってきてください」
 リュートさんは奥さんに合わせない方がいいかなと思ったので外に出る口実を作る。
「こんにちは。初めまして」
 やはり、そうだ。
 夫婦の寝室……だった場所だろうか。
 部屋の中は非常に散乱している。ベッドの上には、取り替えたシーツがそのまま積みあがっていたり、使ったおむつを入れておく桶も、はみ出すくらいおむつが積みあがっている。
 部屋で食事をとっているのか、テーブルには食べ終わった食器がそのまま。離乳食も始まっているのかな。小さな器と小ぶりのスプーンも乗っていた。
 奥さんは寝間着姿のままだし、胸元はいつでも赤ちゃんに差し出せるように、かなりラフな状態だ。……うん。ご主人以外の男性が見るには目の毒。
 泣いている赤ちゃんはリュートと同じくらいか少し小さいかな。
「ほーら、ほーら、どうしたの?お腹すいたのかなぁ?どっか痛くてぶつけた?それともおむつ?」
 奥さん、確か名前はアンナさんといったか。
 アンナさんはベッドの上に座って、もう一人の赤ちゃんをあやしているところだった。

 顔色はあまりよくない。髪の毛もずいぶん整えてないのだろう。ただ、痩せていない。幸いにしてご主人様が料理人だから食べるものだけはしっかり食べて過ごせているようだ。疲労した上にろくに食べていないのでは母乳の出も悪くなって双子ちゃんが常に空腹で余計によく泣いて、もうてんやわんやに拍車がかかっていたところだ。ただし、疲労も十分母乳の出に影響する。疲労は病気じゃないけど、転移できるかな?
 えーっと、白装束Aにつかれよ飛んでいけ!自慢のコーヒーを馬鹿にした恨みは忘れてないですぅ!ぷんすかっ!
「ん?あれ?急になんだか少し楽に」
「回復魔法じゃないんですけど、一時的に少しだけ楽になれる魔法が使えるんです。ほんのちょっとした力なんですけど。えーっと、アンナさん初めまして」
 右手にヨリト、左手にアンナさんの赤ちゃんの一人を抱っこ。ゆさゆさゆさ。
 前にも言ったけど、双子育児経験者。両手抱っこなんてお手の物!
「いいこね。ほーら、ママが元気になったよぉ。嬉しいねぇ」