反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

「お待たせ。彼女の妹の嫁ぎ先が確か宿屋だったと思ってね。赤ちゃんが生まれたという話も聞いてたから、行ってみるといい。宿の主人が赤ちゃんいれば、泣き声がどうということもないだろう。むしろ、客が減ってるみたいだからありがたがられるかもしれないねぇ」
「ハルヤさん、ありがとうございます!早速行ってみます!」
 場所を聞いて、リュートさんと向き合う。
「赤ちゃんがいる宿を紹介してもらえました!お願いすれば、お乳ももらえるかもしれません!」
「すごいな、頼子は。ヨリトにより良い環境の宿をあっという間に探し出してしまうんだから」
「まだ、宿泊できるかは分かりませんけどね」

「すいません」
 1階が食堂、2階が宿というつくりの店。
 1階の食堂は夜だけの営業みたいで、仕込み中の宿のご主人兼、食堂の料理人が出てきて頭を下げた。
「今、ちょっと宿の営業は停止してるんですよ」
 そ、そんな……。
 奥から、赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
 ん?
 ん、ん、この懐かしい泣き声の合唱は!
「双子ちゃんですか?」
 泣き声のしている奥に視線を向けてご主人が頷いた。
「そうなんです。二人生まれて、妻が店の手伝いどころではなくて……。私自身も、育児をしながら食堂だけでも切り盛りしきれずに夜の営業だけにしている状態で……」
 そうか。そうだよね。
 一人面倒見るだけでも夜中の授乳におむつの洗濯、もう倒れそうなくらいふらふらになるのに、二人だと……。
「一部屋は使える状態ですが、あとは掃除もシーツの取り換えも何もできていなくて……」
 一部屋は、空いてるんだ。いいことを聞いた!
「じゃぁ、その部屋に泊めてください!あと、掃除やシーツの取り換えはしてから出ていきますし、あっと、それから……奥さんと赤ちゃんに合わせてもらってもいいですか?」
 ご主人があっけにとられている。
「あー、2部屋希望していたのでは?」
「1部屋でも十分です!」
 と、力説する私の後ろでリュートさんが右往左往していたのには気が付かなかった。
「アンナ、お客さんだよ」
「え?私に?」
 奥の部屋にご主人が案内してくれる。