反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 って、違う。よく見れば、視線はさらに私たちの後ろに注がれている。ああ、もう、私がリュートさんを素敵だと思ってるって自覚しただけだよ。
 何にきゃぴきゃぴしてるんだろうか?
 気になって振り返ってみると、建物と建物の間に、きらきらがいた。
 妙に美しい整った顔をした男の人だ。……あ、そういえば前にも見かけたよね。えーっと、そう、リュートさんが自分を冴えないと言っていたときに、ああいう金髪男性にあこがれてるのかなぁと思ったんだ。
 この近所の人なのかな?人気者だなぁ。女性たちが目で姿を追っている。あ目があった。
 うん。向こうもこっちを見てた?黒髪が珍しいから?
 ん?背を向けて走り出し、あ、躓いた。
 ……。
「……いや、まさか……ね?」
「どうした?」
「いえ、何でもないです。ふふ、ヨリト泣き止みましたね?リュートさん抱っこ上手になりましたね」
 初めて見たときと抱っこの仕方は雲泥の差だ。
「ああ、そうなんだ。ヨリトが、俺の抱っこで泣き止んでくれた。それに、ほら、嬉しそうに笑ってるだろ?」
 ふふふ。リュートさんの顔もとろけそうなくらい嬉しそうですよ?
「あっ、危ないっ」
 ヨリトが容赦なく手をリュートさんの顔に伸ばした。もちろん、狙いは目。
「てっ」
「まだ、ヨリトの攻撃を避けるだけの訓練は足りないみたいですね。赤ちゃんって興味のある者にまっすぐ手を伸ばすんです。人の目だからって容赦ないんですよ。こら、ヨリトおめめはダメでしょ?」
「だー」
「この俺に一撃を与えるとは、なかなかやるな。将来有望だ!」
 リュートさんがヨリトを脇を持って高く掲げあげた。
 ……そういえば、育児の本も出版してテレビにも出ていたカリスマなんとかおばあちゃんが、脇を持って抱っこしてはダメとか書いてたよねぇ……。無理だよね。さすがに、おんぶ紐だって、脇に紐通してよっこらせって背負うのに。……。あの方の持論だったのかな。

「宿ですけど、見てから決めてもいいですか?」
 この世界の一般的な宿もわからない。少し高くて安全という宿でさえも、日本で暮らしたことしかない私にはうへぇってレベルかもしれない。
「ああ、そうだな。俺も直接見て確かめたわけじゃないし」

「申し訳ありません。うちは、赤ちゃんをお連れのお客様の宿泊はお断りしておりまして」
 こちらが品定めする前に、品定めされました。