反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 ……この世界のどこへ行くかということ?3年後には日本に帰りたいし、ときどきわるいことしてないか王様チェックしたり、慰謝料の分割払い分もらいに行ったりすることも考えると、遠くに行くのは得策じゃない。
 かといって、じゃぁ、王都のどこでどういう生活をするのかということも、今はまだ考えられない……というか、私に何ができるんだろう。
 んーと考え込むと、リュートさんが口を開く。
「さっき、お勧めの宿を聞いたんだ。一般的な宿よりも少しだけ高いが、安全面で問題のない宿を教えてもらったんだが……」
 そうだ。
 そうか。これからどうするかって先の展望よりも、今日の宿さえまだ決めてなかったんだ。
「一緒に泊まらないか?」
 リュートさんの言葉におもわず赤くなる。
「部屋は、別で」
 と、リュートさんに全力否定されました。
「あ、はい。そうですね。すいません。宿に誰かと泊まるというと、家族か友達との旅行しか経験なくて……ほぼ同室だったので……」
 みっともない勘違いしちゃった。
 顔が赤くなった自分が恥ずかしい。「は?冗談じゃない」って思えば、きっと怒りだの嫌悪感だので顔が赤くなるようなことはないんだから。
 リュートさんと一緒の部屋に泊まるっていうことに対して……顔が赤くなったのは、その……。嫌じゃなかったからで。初対面の男性と一緒の部屋に泊まることに対して警戒心とかがとっさに出なかった自分が恥ずかしいっ!

「お、起きたみたいだな?」
 部屋からヨリトの泣き声が聞こえてきた。
 リュートさんが慌てて抱っこして戻ってくる。
「ヨリト、おはよう、よく寝たか?おむつは濡れてないか?」
 そういえば、いつの間にかリュートさんは革の胸当てを外していた。
 抱っこしたときに、ヨリトの不快感をなくそうと思ったんだろうか。……ほらね。
 いい人なんだもん。警戒心、持てないよね。
 赤ちゃんに愛おしそうな目を向ける男の人に。
「ん?」
 リュートさんの向こう側に立っていた女性二人が、こちらの方を見てひそひそと話をしている。ひそひそというか、わきゃわきゃというか。
 年齢的には30代半ばくらいの女性なんですが、これが若ければきゃぴきゃぴという擬音を当てはめるような様子だ。
 リュートさんを見て「素敵ね」とか言ってる?うん、赤ちゃんに優しい男性ってだけで素敵ですよね。