反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 いくらお金は多少は持っているといっても、高価な買い物をほいほいするだけの余裕はない。

 お金が足りなくなったからと、慰謝料以上のお金を請求したら、私はただのたかりやというか、やくざみたいなものになっちゃう。
 いくら「命がほしければ素直に言うことを聞くことだ」って言える立場だったとしても……してはいけないことだ。
 つまり、限りあるお金で買うなら、自分で選びたい……。
 待ってと言ってもすでに姿はないし、この姿じゃ後を追うわけにも……がくっ。

「プレゼント」
 と、リュートさんがいくらだったか尋ねる私に笑いかけた。
「……いただけません。ちゃんとお金は払います」
 差し出されたのは、たぶん秋色ジャンルのワンピースだ。モスグリーンがこげ茶になった。
 白ちゃんにもらったワンピースとほぼ同じ形。そういえば、街で見かける人たちもほぼ同じ。上着とスカートに分かれているとか若干の違いはあるものの、シンプルな形の服ばかりだ。まぁ、フリルを付けるだとか、高価な布を無駄に装飾するのは金持ちのすることなのかもしれない。
 スカートの形も、ほぼ足元まであるフレアスカート。足を見せないように、体の線が出ないようにとなるとそうなるのかな。
 よかった。デザインも色も文句はない。あとは、ワンピースの下に着るシャツが何枚かほしいけど、下着類に分類されるのかな。自分で買うか、縫うかってところかな。
「気に入らなかったか?店員さんの言うように、もう少し明るい色にすべきだったか……。変えてもらってk」
 ちょっと、待って。
「リュートさん、私、お金を払いますと言いました。気に入らないとは言ってないです」
 背を向けたリュートさんの服をつかんで引き留める。
「俺から受け取るのは嫌か?」
 は?
「俺から、プレゼントをされるのは迷惑か?」
 どういう意味だろうか。
 日本と同じ意味なのか、こっちの世界では別の意味があるのか。わからないので返事にも困る。
「ち、父から……タダより怖いものは無いって……言われて、育ったので……」
「ああ、懐かしい言葉だ。そうか。頼子の父は日本街の……こういうちょっとした言葉も伝わってるんだなぁ」
 リュートさんが嬉しそうな顔をする。