反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 全然平気だけど。背中見られるくらい、まったくもって全然平気で、前じゃなくてよかった。
 っていうか、ブラとか見られてなくてよかった。たぶんこの世界では異質だよね。まぁ、リュートさんが女性の下着に詳しいとは思わないけど。
 足を見せるのもはしたないというか恥ずかしいというか、色っぽく見えるって世界なら、背中もまずいんだよね。
 ブラウスをもう一度しっかりと着てからドアを開く。
「リュートさん?」
 ドアの前でしゃがみ込んで頭を抱えているリュートさんがいた。
「すまん、悪気はなかったんだ」
 でしょうね。
「許してほしい、その、まだ、一緒に行動したいというのは、わがままだろうか」
 顔をこちらに向けて、懇願するような表情を見せるリュートさん。
 え?何、そんなに背中見たくらいで、大げさな……。
「大丈夫ですよ。気にしてませんから」
 待って、口にしてみてから、はっとする。この世界では重大事件だったとして、それを気にしてないっていうのは、肌を見せるのが平気な職業とか倫理観とか、ちょっとまずかったのかもしれない。
「その、ヨリト……いえ、赤ちゃんを背負っていたら背中でおもらしして、ちょっとそれで濡れちゃったので干そうと思っていたんで、えっと、着替えも持ってなかったので……ごめんなさい。誰もいないと思って好き放題してた私が悪いんで、だから、えっと、気にしてないです」
 慌てて言い訳を口にする。リュートさんが首を傾げた。
「ヨリ……ト?」
「あ、いえ」
 しまった!つい、うっかり、心の中でも赤ちゃんのことヨリトとか呼び始めていたから、するりと口から出ちゃった。
「赤ちゃんの名前を尋ねられて、毎回毎回捨て子捨て子というのも、赤ちゃんにもよくないし、その、適当にえっと……ごめんなさい。勝手にそう呼んで……」
 言い訳ばかりだ。
 リュートさんが嬉しそうに笑って立ち上がった。
「頼子のヨリと、隆人のトで、ヨリト?」
 う、そうです。その通りです。
 重ね重ねすいません。
「ありがとう、頼子。着替えがないって言ってたよね。買ってくるよ」
 テンション高めに、手をふっとリュートさんが出て行った。
「まって!」
 服を買ってくるって、着替えがないのも本当だけど、でもこの世界の服って、きっと高額だよね。ほいほい何着も買えないよね。