反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

「そうさ。1枚10分もありゃ縫えるだろう。洗濯は時間ばっかりかかって好きじゃないんだ。一人じゃないから、こうしておしゃべりしながらやってるけどねぇ。一人で黙々とこんなことしててご覧?」
 50代の女性がふぅっと小さくため息をついた。
 うーん。一人で黙々とたらいの洗濯ものを踏み続ける……。うん、退屈しちゃいそうだ。
「分かる分かる。洗濯の時間じゃなくて、おしゃべりの時間だと思えばいいけどねぇ。じゃなきゃ、ここまで往復するのもめんどくさいし、洗濯してる時間があれば、散らかった部屋の掃除もできるし、買い物にも行けるし……内職だってできるのにと思うと……」
「かといって、あんまりため込んじゃうと後が大変だし、着るものなくなっちゃうからねぇ……子供なんて汚すなといってもどっかで汚してくるし」

「子供だけならましだよ。うちは主人が仕事で毎日真っ黒にしてくる。黒いだけならいいんだけど、匂いがひどくて洗濯しないわけにはいかない」
 そうか。おむつ以外でも毎日洗濯しなければいけないような人もいるんだ。布が高いということは服も高い。着替えをたくさん持っているわけでもないからそうなるのか。
「お待たせ。じゃぁ、おむつ変えてあげるよ」
 赤毛の女性が戻ってきた。私の背中から赤ちゃんを下ろして、てきぱきとおむつを替え始めた。
「いい布もらちゃったからね。おむつはこれだけ。2日分はあると思う。けどこれだけじゃ申仕分けないからね。赤ちゃんの着替え。ほら、これですっきりしたね!」
 赤毛の女性が、おむつ替えだけじゃなくて持ってきた服に着替えさせてくれた。
「すいません、ありがとうございます」
 もう、ぺこぺこと頭を下げるしかない。
「お礼を言うのはこっちだよ。布を見たとたんに娘も目を輝かせてたからねぇ。新しい服なんてもしかすると初めてのことかもしれないからね」
 と、お互いにぺこぺこお礼を言い合っていると、50代の女性ががははと豪快に笑った。
「ははは、誰も損してないんだ。いいことだ。じゃぁ、おばちゃんももう行くからね。ヨリト君、ばいばい、いっぱいおっぱい飲んで大きくなるんだよ!」
 選択が終わった50歳の女性……ああ、誰かに似ていると思ったら、あれだ。「40秒で支度しな!」っていう豪快でかっこよくて頼れる「おばさま」。