反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 うーん、相当熱でフラフラだったんだよね。ただでさえまだ3時間おきくらいの授乳で睡眠不足で大変な時期だろう。そこにもってして高熱。
 赤ちゃんが泣いていても起き上がれないくらいの……。
 ママが赤ちゃんのおむつを替えようとベッドに寝かせる。
「あの、この子のおむつもここで代えさせてもらってもいいですか?その……急に預かった子で、えーっと、いろいろとわからないことだらけで……」
 ママが笑った。
「ええ、もちろんどうぞ。あ、大きな方?お水もいるわね。ちょっと待っていて」
 と、女性が家の入り口に一番近い部屋に行った。
「ごめんなさい、ここ数日調子が悪かったから、瓶に水がなくて……すぐにくんでくるから」
 え?えええ?
 ちょっと待って、待って、そうか。水一つとっても、蛇口をひねればいい世界じゃないんだ。
 病み上がりなうえに、こちらが頼みごとをしているのに……。
「あの、水汲みは頼みますからっ」
 バタバタとママを追い越してドアを開ける。

「リュートさん、水汲みを頼んでもいいですか?水瓶が空になってるそうなんで」
 と、外で待機していたリュートさんに遠慮なく頼みごとをする。いや、だって、この場合、一番力仕事に向いてるのリュートさんだよね?
「ん?ああ、瓶はそれ?いっぱいにすればいい?井戸はどこかな?この街には来たばかりで」
「いいんですか?井戸はあちらの角を曲がった先にあります。でも、瓶をいっぱいにするのには10往復はしないといけないので、使う分だけで……」
 10往復。
 ……角まで300mくらいだろうか。曲がってどれくらい行くのかわからないけど、1往復で600m。10往復するだけで6キロも歩くことになるんだ。しかも、重たい水の入った桶を持って……。
 大変だ。
 水を運ぶための木桶……木のバケツは5リットルくらい入るだろうか。5キロか。あ、赤ちゃんに比べれば軽いものか。
「ああ、大丈夫。ちょっと行ってくるよ」
 と、リュートさんはひょいっと瓶を肩の上にのせて走っていった。
 瓶……陶器でできててそれだけでも重たそうだし、水を入れたらもっと重くなるのに……大丈夫なのかな?
「旦那さん、力持ちですね……」
 と、女性が唖然としている。
「あ、旦那じゃないんです。えーっと、私は頼子です」