反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 妹の子供だったし、私は基本的にお手伝いポジションだったけれど、それでも本当に大変だった。まぁ、お手伝いとはいえ、双子ちゃんだったから、またちょっと特殊だったのかもしれないけれど。妹一人だったら……って考えると、想像を絶する。こうして、食事するときすら、抱っこしたままとか当たり前で、片時も一人でゆっくりなんてできない……んだよね。ああ、懐かしい。
「あ、おいしい」
 スープは、野菜の甘味がしっかり出てる。何の野菜なのか分からないけれど、にんじんっぽい黄色いものや、玉ねぎっぽい透き通ったもの、セロリっぽいちょっとシャキシャキ間の残ったものに……5種類くらいの野菜が入っている。それから鶏肉っぽい細かい肉も入ってるかなぁ。
 薄切り肉も、ハーブと塩でしっかり味がついている。胡椒っぽさや香辛料っぽさがないので、もしかすると香辛料っぽいものはあまり食べないのか、高いのか、そもそも存在しないのか。
 ローズマリー、タイム、ニンニク、オリーブオイルっぽいかな。
 美味しい。

 肉を口にしてから、パンを……と思ったけれど、パンに手を伸ばしてどうしたものかと悩む。
 リュートさんは、ちぎって口に入れてる。片手が赤ちゃんでふさがっているので、ちぎれないから……かぶりつく?
「これくらいでいいか?」
 ん?
 どうしようか悩んでいたら、リュートさんが一口サイズにちぎったパンを差し出してきた。
「ありがとう」
 ちぎってくれたんだ。
 差し出されたちぎったパンを受けとろうとしたら、リュートさんが、そのまま腕を伸ばしてパンを私の口の前に持ってきた。
 え?
 まさかの、あーんですか?
 どうしろと……。
 えーい。この世界の普通がわからない私には一つずつが試練だ!正しい選択がわからないっ。とりあえず差し出された分だけは食べよう。
 は、恥ずかしいっ!けど、えーい。ぱくん。
「ありがとうございます、あの、あとはちぎってお皿に置いてもらえれば、自分のタイミングで食べますから」
 次はない。断る。
「あ、そうか。片手は開いてるんだ……ったな」
 リュートさんがはっとした顔をする。
 あ。
 失敗。
 あーんは素直に回避すればよかった……。単に、私が片手に赤ちゃん、もう片方の手にパンを持っていた状態を見て「両手がふさがってる」と思われただけなのか……。