反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 うーん、そう考えると、私、男も育児に参加しなさいよ!と憤ったけれど……。共働きじゃないのが当たり前だと、男がとにかく外で働かないと……なのかなぁ。うーん。
 とにかくこの世界のことを知らないとダメだよね。……。いくら「日本の常識で腹が立つこと」でも、この世界では必要な仕組みというのがあったりしたら、やみくもに怒っても仕方がない。
 ……だけど、召喚はダメだよ。必要じゃないでしょ。もともとこの世界にいなかった人間、いなくても回ってたんだからさ。
 それから、権力に笠を着て、やりたい方だも絶対ダメだ。さすがにそれは……どの時代でもどの世界でも納得できる理由があるとは思えない。
「もしかして、君は」
 君?
 ああ、まだ名乗ってもいませんでしたね。

「あの、頼子です。ヨリコ」
 男の人が目を見開いた。
「頼子!」
 あ。ちゃんと発音してもらえたよ。
 ヨーリコとか、ヨリーコとか、言いにくいからヨリとかリコとか呼ばれることも覚悟してたんだけどなぁ。
「あ、あの店がよさそうです。入りましょう」
 目の前に掃除が行き届いていて、お客さんの笑い声が聞こえてくる店があったので、ずんずんと店内に入っていく。
 いくら美味しくても、店主が怒鳴り散らして食べ方にルールを強いる店って好きじゃないんですよね。失敗しないように緊張して食べるとか、おいしさ半減じゃない?なので、笑い声が聞こえてくるのは大事。
 あ、もちろんしっとり落ち着いてプロポーズが似合うようなレストランだったら、外まで聞こえるような笑い声はNGだけどね。
「いらっしゃい」
 テーブルが10個ほどの店の8割が埋まっている。一番奥のテーブルに座る。
「ご注文は?食事でいい?銀貨1枚の定食と、銅貨7枚の定食と銅貨5枚の定食から選んで。酒は銅貨5枚、果実水は銅貨3枚。その子の分はどうする?もう食べられる?食事を注文してくれるんなら、ミルクがゆをサービスするけど」
 うわぁ。いい店。
 明朗会計だし。
 この子の分まで考えてくれるなんて。
 ちょいと、抱っこしている赤ちゃんの下唇を引き下げて口の中をのぞくと、かわいい前歯がちょんっと2本生えている。
 生後半年くらいに見えるけど、それくらいならもう離乳食始めてるかな?