反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 ん?もし痛いなら、私が何とかしてあげられるんじゃない?
 きょろきょろと泣き声の元を探す。
 あ、いた。
 不器用な手つきで、赤ちゃんを抱っこしておろおろしている男が。
 なんじゃありゃ!泣くよ。泣く!
 あれは痛いとかお腹すいたとか以前に、不安定な抱き方されて怖いんだよっ。安心感がなくて不安なんだよっ!
 普段子供の面倒を見ない父親が、母親にちょっと抱っこしてって頼まれたのかな。
 おかぁさーん、早く戻ってきてあげてくださいっ!
 きょろきょろと周りを探すけど、母親らしき人の姿は見えず。
 うーん。母親は病気とかで赤ちゃんに移すといけないから父親は赤ちゃんを連れて外に出ているんだとすれば……私の能力が役に立つ!
 病気は父親に転移させちゃうよ。赤ちゃんのために!子供の面倒も見れない父親が病気になったほうが赤ちゃんのためにはいいよねっ!キリリッ。
 ほ、ほら、男の人なら体力もあるし、授乳とかしなくてもいいし。それに、熱が38度でも仕事した!とか謎の自慢もしたがるし。
「あら、元気な赤ちゃんね。どうしたのかなぁ?ママがいなくて泣いてるのかなぁ?」
 と、赤ちゃんに話しかけるフリして自然に近づく。
「ああ、この子の母親はいないんだ」
 振り向いた男の人が悲しそうな顔を見せた。
 うわ、日本人顔だ。この世界にも日本人顔っているんだ。みんな西洋風かと思ってたよ。
 日本人的基準だと30代半ばかな。そして、日本人的基準だと背が高い。
 180センチはありそう。
 この世界だと、180センチでも少し高めくらいだし、たぶんもう少し若く見えるんだろうなぁ。って感じで。
「母親が、いない?ごめんなさい。あの、抱っこさせてもらってもいいですか?」
 泣き続ける赤ちゃんを受け取り、抱っこして揺れながら、背中をぽんぽんとたたく。
 しばらく続けると、激しく泣いていた赤ちゃんが少しずつ落ち着き、眠った。
「ありがとう、助かったよ。赤ちゃんなんてどうしていいのかわからなくて」
 その言い方に、ついきつい口調になってしまう。
「母親がいないってことは大変だと思うけど、父親のあなたがそんな言い方。どうしていいのかわからないなら、もっと勉強すべきだし、自分でなんともならなければちゃんと分かる人に助けを求めるべきだわ!わからないから仕方がないでは、赤ちゃんには迷惑ですっ」
 男の人が頭をかいた。