反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 と、お金の入った巾着を見せる。黒装束から受け取ったお金だ。どうもこの世界の財布は巾着らしいので、巾着を手に持ってたら金持ってますってバレバレだよね。さすがに無謀だと分かる。
 それから、お城の中だけを見た感じ、黒いズボンに白いシャツに茶色のエプロンっていう私の姿は、どうも浮いている。
 街に出たら間違いなく目立つ。
 というわけで、城を出る!ことばかり考えていたけど、出てからのことも考えないと。
「あ、はい。用意します、えっと、こちらでお待ちください」
 バタバタと走り去る白ちゃん。あ、ころんだ。
 あれだね。どうにもあの足元まである白装束。裾を踏んじゃうよね、気を付けないと。
「痛いの痛いの半分だけAとBに分かれて飛んでけ~」
 と、手をそっとかざす。立ち上がった白ちゃんがちょっとびっくりしたようにきょろきょろとしたので、成功かな。

 城の1階の、どこかわからない廊下の壁にもたれかかる。
 廊下はずいぶん先から先まで続いていて……。大きな立派なお城だというのが分かる。
 石づくりだったのは、どうも召喚の間のある地下だけのようで、1階は、壁は白塗り。木の柱も見えるし、いわゆる「要塞」としての側面のある「石造りの頑健なだけが取り柄の城」とは違って、そこそこ豪奢な見栄えだ。
 ってことは、ある程度のこの世界は平和なのか。それとも、この国が栄えている、他国の侵入を防ぐことができているのか。
 ろくでもない王様だったからなぁ。もしかすると、単に浪費家、国民を犠牲にしてる可能性も……。
 あ、むかむかしてきた。
 ……そういえば、聖女を召喚した理由、結局聞かなかったけど何だったのかな。
 他国より上に立ちたいみたいな理由だったら「はっ笑止」で終わるけど。
 魔王を倒してほしいみたいな理由だったら、まず自国の戦力どれくらい投入したのか教えてほしい。自分たちで倒そうと努力もせずに、勇者だとか聖女だとか召喚して「頼んだ」だとしたら「けっ冗談じゃない」だし。
 まぁ、でもさ。
 ……回復魔法が使えるわけじゃないし、私に何ができるのか……とは思うけど。
「お、お待たせいたしました!聖女様っ!あの、これ、これを……!」
 白ちゃんが走ってきた。
 えーっと、転ぶよ?あ、つんのめった。耐えた。