反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 ……。うーむ。って、そんなことはおいおい知ればいいとして。まずは自分の情報だ。

 反逆の聖女の意味は分からない。
 魔法は2つ。
 病傷転移魔法。詳細表示すると、説明が読めた。痛いの痛いの飛んでいけ!で、どんな病気も怪我も呪いも毒も、人の害になるものは誰かに転移させることができる。転移先は1か所でなく複数に分けることもできる。自分自身は自動で病気や怪我や呪いや毒をもたらした人間にはね返る。ほかの人は手をかざして念じる必要がある。
 ……うーんと、つまり、なんだ?
 聖女って、回復魔法のイメージあるけれど、回復させるんじゃなくて、回復させたように見えるだけ?ほかのだれかが苦しむことになるってこと?
 祝福魔法。病傷転移の力を少し分けてあげられる。本人のみ有効。子供が無事に成長するように。戦地に向かう人が無事に帰ってくるように。願いが形になる。
 ふむ。一見すると便利そうだけど……。
 怖くもあるよね。
 例えば、戦争に利用されたり。怪我をしない兵団とか作れちゃうわけでしょ?祝福じゃなくて、これってある意味呪いじゃない?
 どちらにしても、「自分さえ良ければいい。誰かが自分の痛みを受け取れ!」だよねぇ。あんまり気持ちのよい魔法じゃない。使わずに済むなら使いたくないよね。
「聖女様、陛下が王の間でお待ちです」
 ドアが開いて、白装束Bが顔を見せた。いや、顔は見えないけど。マスクが覗いた。……もしかして白装束Aかもしれない。どっちでもいいけど。
 陛下……ねぇ。
 そっか。
 やっぱりそう来たか。
 カルト宗教団とか白魔導士協会だとか、そういう団体じゃなくて……召喚したのは「国」かぁ。
 っていうか、王様ってやつか。
 王様。こっちからしてみれば、何様だよっ!
「はい。白ちゃん、あと1杯分あるから。飲んでね」
 コーヒーサーバーとカップを白ちゃんに渡す。
「え?シロチャン?あ、ありがとうございます。いいんですか?すごくおいしかったので嬉しいです」
 嬉しいって言ってもらえれば私も嬉しいよ。
 簡単に手を振って、Bの元へ。
 そのまま素直に王の間へと案内されながら、ステータスを思い出す。
 反逆の聖女……。
 それは、聖女として従わないということだろうか。
 ふっと、笑いがこみあげてきた。