反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 それから……聖女聖女言われてたけれど……これは、いわゆる「異世界から聖女を召喚」的な……。ファンタジー小説でよくある、アレ……?
 嘘でしょう?
 嘘だよね?
 あー、えっと、……。
 そう、とりあえず、落ち着こう。うん、落ち着くには……。
 白ちゃんの差し出したカップを受け取り、コーヒーを注ぐ。
 ふわりと立ち上るコーヒーの香ばしい香り。
 少しだけ冷めてしまったコーヒーは飲み頃で。
 香りを鼻から楽しんでから、ごくりと喉を潤す。
「はー、やっぱり美味しい」
 うちのブレンド最高!コーヒーの淹れ方も絶品。こんな素晴らしいコーヒーを、得体のしれないものとか言ったAとB、許すまじ。
「えーっと、聖女様、ご説明をさせていただきたいのですが……。まずは、えっと……何を説明すればいいんでしょうか?」
 私の正面にぺたりと座っている白ちゃんが首を傾げた。
 うーん。いかにも怪しいカルト宗教っぽい白装束なんだけど、こういう仕草はかわいいんで、なんだか「ゆるキャラ」に見えてきた。
 ……。
「ねぇ、なんでそんな恰好してるの?」
 ふと、疑問に思ったことを尋ねる。
「あ、えっと、僕は白魔導士なんで。えーっと、白魔導士って分かります?」
 白魔導士?
 どんどんファンタジーになってきましたよ。驚く代わりに、コーヒーを一口。ゴクリ。
「あーっと、魔法とかがない世界にいたので、全然分かりません」
「あっと、魔法が使える人は、この世界でも少数派で、えーっと、100人に一人くらいなんですが、その中でも強い魔法が使える人間は魔導士という位になります」
 ふーん。ってことは、もしかして白ちゃん、こう見えてエリートなわけ?
「水、光、木、風などの魔法を使う者は白魔導士で、闇、呪い、毒などの魔法を使うものが黒魔導士です」
 うわっ。黒魔導士なんてのもいるんだ。しかも、呪いとか……カルト教団っぽさが増してる。

「えーっと、あと、赤魔導士……という、身体能力強化系の魔法を使う者は、主に騎士になりますので、赤魔導士とは呼ばれません」
 ふーん。なんかよくわかんないけど、魔導士がなんでも魔法を使えるわけじゃないのかな?何でも使える万能タイプとかいないのかな?
「魔法が使えるとか、どうしてわかるの?」
 100人に1人で、しかも魔導士レベルになるともっと少ないわけだよね?