反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 聖女もどきの私だけど。勇者と賢者はいると言っていた。賢者は知恵を授ける人だろう。私でも鬼退治に役立つ方法を考えてくれるかもしれない。
 会いに行こう。まずは、賢者に。
 リュートさんが賢者の居場所を知っているから、まずはリュートさんの帰りを待ってから、賢者の元に連れて行ってもらおう。

 孤児院を出ると、王都の扉をくぐってこちらに向かってくる人影た2つあった。
「ヨリコっ!」
「リュートさん、戻ってきたんですね。ちょうど、リュートさんにお願いがあって!」
 後ろにいる人物に視線を移す。
「そちらの人は?」
「賢者だ」
 賢者!
「直接足を運んで水車を作ったほうがいいと、来てくれた……だが……」
 リュートさんが申し訳なさそうに頭を下げる。
「すまん、頼子……俺は、賢者と行く」
「行く?どこへ?」
 リュートさんが小さく首を振った。
「心の底から守りたいものができた。頼子……ヨリトを頼む。頼まれてくれ……」
 心の底から守りたい?ヨリトを?
「守りたいなら、どうして行くの?ヨリトを、なぜ連れて行かないの?」
 リュートさんが腕を伸ばした。
 手の平には何もなかったはずなのに、一瞬にして剣が現れた。
 剣じゃない。日本刀のような形をしている。刀……と呼んだ方がいいかもしれない。
「鬼を唯一切ることができる鬼切刀だ……。勇者でありながら、俺は今までこれを出すことができなかった」
 鬼切刀?勇者?
「守りたいと強く思ったことで……出すことができた。鬼から、ヨリトを……そして、頼子を守りたい。だから、行く」
 刀を出せない勇者……か。そうなんだ。
 勇者として召喚されながら、勇者としての役割を果たせなかったリュートさん。
「待って!勇者と賢者と聖女の3人が揃わないと鬼を退治できないんでしょう?」
 リュートさんがふっと笑う。
「聖女の召喚には失敗したらしい。30年は待っていられないし……完全に退治できなくても数を減らすくらいならできるだろう。鬼の力をそげば、しばらくは」
 完全に、死を覚悟した男の顔してる。
 リュートさん。
「死んでもお前たちは俺が守るって、かっこ悪いですよ、ねぇ」
 リュートさんに抱き着く。
「は?あ、いや……そうだな、そんなこと言っておいて守れなかったらかっこ悪いよな」
 ぶんぶんと首を横に振る。