反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 知らない、知らない。
 院長室を出る。廊下で黒服の女性を見つけて捕まえる。
「特別室って、どこ?」
 黒服の女性たち。もしかすると、黒魔導士の系列の人なのかもしれない。
 黒服の女性は教えるのをためらう。そりゃそうか。院長先生がトップだとすると、私はその院長先生と敵対しているような立場だ。
「案内を」
 白ちゃんが私の後ろから黒服の女性に声をかけると、すぐに案内してくれた。……白ちゃん便利。
「やめてっ!この子たちは私が助けるからっ!」
 ナイフで傷つけられ用としているところを済んでのところで止める。
 血を抜くと言っていた。注射器で献血のように抜くなんてできないから、傷をつけるということか……。
 なんという残酷な。
「どう、助けるというの?」
 院長先生の声には、先ほど院長室で見せたような感情がない。
 淡々と、機械のようにことを進めようとしている。そうでもしなければ子供たちの前にいるのが辛いのだろう。
「あなた方は、選ばれし子供たち。聖女や勇者や賢者の代わりとして、この世を救う存在です」
 子供たちに向けて発せられる言葉。
 これからどんなことが待っているか子供たちは知っているのだろうか。

「はい。勤めを果たします」
「僕も、勇者代理として頑張ります」
「聖女様の身代わりになれるなんて光栄です」
 子供たちがにこりと笑う。
 誇りのある使命。何が待つのか、今ナイフを当てられることへの恐怖よりも、その先の世界を救うための使命に満足している顔だ。
 自分たちにしかできない。それが辛さを伴うとしても。世界のためにと。
「僕たちは、親に捨てられたんじゃなくて、神様に選ばれたんでしょう?」
 子供の言葉に、院長がふわりと優しく抱きしめる。
「ええ、そうですよ。あなた方のようにいい子を捨てる親なんていません。神様があなたたちを選んでここへ連れてきたんですよ」
 親に捨てられたんじゃない。
 神様に選ばれたんだ……か。
 そんなはずがあるわけがない。神様が、わざわざ鬼のいけにえを選ぶわけがない。けれど……けれど、この子たちの心を傷つけるような言葉なんて出せるわけもない。
「さぁ、腕を出して。神様に血をささげましょう」
 院長先生の言葉に、少年が腕を差し出す。
「だめっ!」
 ナイフが少年の腕に当てられる。
 鮮血が傷口から飛び出す。
 真っ赤な血。