反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

「なんてことを……して……くれたの……」
 ギリギリと喉の奥から絞り出すような怒りのこもった声。
「私たちが、どれだけ苦しみながら……今のこの状況を作り出したと……」
 え?
 この状況を作り出した?
 子供たちが十分に食べられない状況を作り出した?
 ああ、違う。大人になって出て行ったときに困らない教育体制を作ったということだよね。
「大丈夫です。子供たちの勉強する時間を削るようなことはしていません。ちゃんと、勉強する時間を確保したうえで、仕事も」
 力が抜けてうなだれていた院長先生が、突然私の襟首をつかんだ。
 ギリギリと締め上げられていく。どこにそんな力がというほどだ。
「何もあなたはわかっていない……。勇者も聖女も賢者も……何もしてくれないから、あてにならないから、だから、だから私たちが……人々を守るために、必死に、必死に今を作り上げてきたというのに……」
 え?
 勇者や聖女や賢者が何もしてくれない?どういうこと?何を言っているの?
「こんな辛い思い、誰もしたくない。子供たちがかわいそうで、だけれど……この世界のためには……」
 ボロボロと院長先生の目から涙が零れ落ちる。
 ギリギリと閉めていた院長先生の手が離れた。
 ごほっ、げほっ。
 せき込みながら、院長先生に尋ねる。
「げほっ、どういうことですか?院長先生の話からすると、あの子たちは、わざと食べさせてないみたいに聞こえます……どうして」
 お金の問題じゃないの?
 もしお金があったとしても、子供たちに食べさせることはないっていうことなの?

「もう、関わらないでください。あの子たちをこれ以上苦しめないでっ」
 何を言っているの?
「私は子供たちのことを思って、苦しめてなんかいませんっ」
 院長先生の涙は止まっていた。
「これからまた、食事の量を減らします。もっと食べたい、お腹がすいたと、苦しむことになるでしょう」
「どうしてそんなことを!お金の問題なら解決すると、その方法を……机上の空論ではなく、すでに実施しています。この先の展望も、協力者も、それから」
 院長先生に、説明のためにと用意した書類を差し出す。白ちゃんに協力してまとめたものだ。
「あなたは何も分かっていない。あなたも、苦しみたくなければ……これ以上かかわらないで」
 院長先生は、書類を受け取るとすぐに破り捨てた。