反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 と、全力で否定したかったけれど、今まで信頼していた院長先生の言葉を私が否定するわけにはいかない。
 院長先生が嘘をついていた、院長先生が嫌いと子供たちに思わせてしまったら。
 私は1か月だけの代理。これから先はまた院長先生が孤児院の子供たちと過ごしていくのだから。不信感を与えてはいけない。
 せっかく、皆こんないいこに……食事の件は受け入れられないけれど、確かに院長先生は愛情をもって子供たちを育ててくれているんだから。
「そうだった、おばさん、大人だから、子供のころのこと忘れちゃった。お代わりはしちゃ駄目だったね。ごめんね。えーっと、じゃぁ、まだ食べれそうな子は手を挙げてね。明日のご飯の量を少し増やそうね。逆に食べるのが苦しい子も教えてね。明日の量を減らそうね」
 それから1週間。
 子供たちは、飢え死にしそうな容姿から、痩せてがりがり程度になった。
 まだ、手足は細く頼りない。けれど、異様に目立っていたぽっこりしたお腹はそれほどでもなくなってきた。
 このままの生活を続けて行けば、すぐに子供らしいふくふくした体形になるだろう。

 白ちゃんの話では、今日が院長先生復帰の日だ。
 1か月がたった。リュートさんもそろそろ戻ってくるはずだ。
 食事の事業計画や今後のことを相談しようと、院長室で院長先生が来るのを待つ。
 ドタバタと、あまり上品とは言えない足音が聞こえてきたと思うと、ノックもせずにドアが開いた。
「なんてことをしてくれたのっ!」
 鬼のような形相で、院長先生が部屋に入ってきた。
 何てこと?
「あれほど、食べさせてはダメだと……あの子たちのあの姿……いったいどれだけ食べさせたのっ!」
 子供たちの姿をすでに見たのか。
 院長先生は、部屋に入ると、床に座り込んでしまった。
 両手をついてうなだれている。
 そんなにショックだったのだろうか。
「安心してください。一時食べられるだけじゃないです。お金は寄付ではなく、あの子たちが働いて得たものです。これから先も継続してお金を手に入れられる仕組みを作りました」
 院長先生の前に座り、安心させるようにゆっくりと言葉をかける。
「後で詳しく説明します。子供たちだけで自分たちの食費を得ることができます。街では、孤児院出身者の人が協力してくださいますし、今後、まだ収入が増える可能性も」
 院長先生が顔をあげた。