反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 ……また、あの子供たちの姿を見るのかと思うと胸が痛む。だけど、今回は違う。助けてあげられるという希望が胸の中にあるから。
「新しいこととは何ですか?」
 白ちゃんの言葉に返事をする前に、迎えに来た子供の姿が見えた。
 隣で、息をのむ音が聞こえる。
「あの子たちに、もっとご飯を食べさせてあげたい」
 小さな声でそういうと、白ちゃんが顔を上げた。
「分かりました」
 いつもより、男らしい声で返事が返ってきた。
「私の姿は姿を見せない方がいいと思う。ここまで案内しただけということにしてくれる?それから、院長先生には今までの労をねぎらって保養地にでも行ってもらうことにして、それから、事後承諾になるけど、孤児院の1か月院長交代は”私”からの命ということで、宰相や陛下には伝えておいて。そうすれば誰も罪に問われないはずだから」
 案内係の子供が来る前に早口でそれだけ白ちゃんに伝える。
「白、魔導士様?」
 案内係の子供が私を見た後に隣にいる白ちゃんを見て驚いた顔をしている。
「孤児院の場所を尋ねられたので、案内してきました。院長先生に用事があるそうです」
 それだけ子供に伝えると、すぐに背を向けて孤児院を後にする。
 王都を囲む塀の外で、白ちゃんの帰りを待つ。
「むーすーんーで、ひーらーいーて」
「だーだ」
「別の歌がいい?じゃぁね、ぞーうさん、ぞーうさん、おーはながながいのね」
「うーあー」
「ぞーうさん、ぞーうさん、だーれがすきなぁの、あーのねかぁさんがすーきなのよ」
「うーう」
「ヨーリト、ヨーリト、だぁーれがすきなぁの、あーのねかぁさんがすーきなのよ」
「きゃあきゃっ」
 ヨリトが飛び切りの笑顔を見せる。
「私も、ヨリトが大好きだよー!ほーら、たかいたかぁい、飛行機ぶぅーん」
「飛行機ってなんですか?」
 ほえっ。
 気がつけばいつの間にか白ちゃんが戻ってきていた。
 そうか、飛行機……ないんだ。もしかして、象って動物もいない?気を付けないと。あっという間にこの世界の人間じゃないってばれちゃうかもしれない。
 子供をあやしてるときって、もう無意識レベルで歌ったりしちゃうから……。気を付けないと。

「どうだった?」