反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 白ちゃんがぎくりと体をこわばらせた。
 あ、正体は秘密だったね。
 えーっと。
「も、もし白魔導士様ならなんとかなるなら、白魔導士様に手紙を書いてみようかな……と。えーっと、ほ、ほら、私、日本人街出身だから、あーっと、珍しい人間の頼みなら、ちょっとは聞いてくださるかも……ね?」
 あははは。苦しい言い訳。
 白魔導士様と面識はないけど、私の話なら聞いてくれると思うのって、ずいぶん、なんか、自己評価が高い女になってしまった。
 痛い女だよね……。
「そ、そうですね、日本人街の方々は、元勇者様や、元聖女様や、元賢者さまのご子孫にあたる方も多くいらっしゃいますし、白魔導士様もむげにはできないと、思います」
 白ちゃんも話を合わせてくれる。ごめん、いつもなんか唐突に頼み事ばっかり。
 お礼に、また美味しいコーヒーごちそうするから。まぁ、コーヒーがこの世界にあればだけど……。ないかな。日本人街には何があるんだろう。どの時代の人たちが作ったんだろう。「日本人」と言っていることから、『大日本帝国』よりも後の人間がいることは確かだよね。
 味噌や醤油はあるかもしれない。コーヒーはどうかなぁ。豆さえあれば誰かが焙煎して飲むことくらいやってそうだけど。
「時々白魔導士様や黒魔導士様が訪ねてきていたので、院長先生も話を聞いてくれると思うよ」
 兵が口を開く。
「権限はどちらが上になるのかな?」
 すかさず別の質問をぶつける。白ちゃんがその白魔導士だとは思われてないようだ。
「孤児院は国の運営ですから、魔導士の方が立場は上でしょうね」
 と、白ちゃんがさらりと答えた。
 えーっと、魔導士って、そんなに上の立場なの?国の中でも、どっちが立場が上かなって迷わず即答できるくらい上?
 白ちゃんが私を見てにこりと笑う。

「その魔導士よりも、陛下は立場が上で、さらに聖女様の権限の方が強いので、何かあれば命ずることが……」
「うわー、ヨリトぉ、どうしたの、お兄ちゃんと遊びたいの?」
 白ちゃんがうっかり口を滑らせて、聖女なんて単語出したので、これ以上うっかりしないように、慌てて口封じ。
 よだれまみれのヨリトの手が白ちゃんの顔に届く位置に差し出す。
「だーうー」
 ヨリトが嬉しそうに白ちゃんの目に手を伸ばした。