反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 兵の答えは、こうだった。一緒に育ってきた仲間である子供たちに愛情があるがゆえに、会えばお菓子の一つでも持って行ってあげたくなる。それはよくないからと。愛情があればあるほど、何かしてあげたくなる……だから、顔を見るのは禁止にした。その代わりに、あの子たちが大人に……15歳で成人を迎えた時には、街の生活になじめるように手を貸してあげることになっている……と。
 そこまで食べ物を与えることを排除しているのか。
 なぜ、そこまでしないといけないのか……。過去に、もう一度美味しい物が食べたいと、街で盗みを働くようになった子でもいるのだろうか。それとも、他の子の食べ物に手を伸ばす子……力関係を利用して他の子の食べ物を奪う子でもいたのだろうか。
 ……ないのが当たり前の状態……例えばスマホとか、存在しなかった時代には、なくても平気だったのが、スマホが当たり前になると、スマホが手元にないと不安になる人間はいる。知ってしまうともとに戻れなくなるというのも分かるけれど……。

 成長期なのだ。子供は……。体だけじゃない。食べ物は、心も頭も作るというのに……。
 困ったなぁ。何度足を運んでも門前払いで、話を聞いてもらえない感じだった。
 誰かに代わりに伝えてもらおうにも……。孤児院出身者に頼むこともできないのか。
 ふと視線を感じて顔を上げると、きゅっと、リスのような動きで建物の影に引っ込む人の姿が。
 白ちゃんだ。
「おーい、白ちゃんっ!」
 手をぶんぶんと振って白ちゃんに駆け寄る。
 ……と、待てよ。昨日はリュートさんが、白ちゃんにナンパ男という汚名を着せていたけど……。
 これ、もしかしなくても……。
 リュートさんという旦那がいない間に、イケメンに声をかける不貞の女だとか……私に入らぬ汚名が着せられる案件なんじゃなかろうか?
 まずい。非常に、それはまずい。
 白ちゃんには常に女性の視線が集まっている。
 女性は噂好きだ。
 しかも、私って、黒目黒髪で、覚えられやすい容姿をしている。ほら、私をちらちら見ている人もいっぱいいる。
 白ちゃんをとっつ構えて、兵たちのところへ戻る。
 二人きりはあかん。
 これで、私と白ちゃんと兵が2人の4人だ。
「白ちゃん、白魔導士って、偉い人なんだよね?孤児院の院長に話があるんだけど、話を聞いてくれなくて、白魔導士なら何とかなる?」