反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

「あの子たちは、大人になれば幸せになれるんですっ」
 院長の声が震えている。
「それはもちろん、院長先生たち、孤児院の方々が子供たちに愛情を持って接してくださっているのは分かります、子供たちが十分な食事をとれないことを責めているわけではなくて」
 私の言い方が悪かったのだろうか。
 怒らせてしまった。
 今までのやり方が間違っていると批判するつもり何て一切ないのに。
 ただ、協力したいだけなのに。

「私たちは……私たちにできることを精一杯しているだけです……」
「はい。わかっています」
「何も分かっていない……何も分かっていない癖に……」
 院長の細い腕が、信じられないくらい強い力で私の背中を押す。
「誰か、追い出してっ」
 院長の叫び声に、部屋に3人の女性が入ってきた。私と同じくらいの年齢の女性は、上から下まで黒い服を着ていた。
 顔にマスクはしていないけれど、その色に黒魔導士を連想する。黒魔導士は……呪いなどの魔術を使う人ではなかった。一瞬体が固まる。
 女性たちは私の腕に手を添え、部屋の退出を促す。
「話だけでも聞いてください」
 声はバタンと閉じられたドアに阻まれた。
「勇者や聖女が……助けてくれないからっ」
 何かをたたきつけるような音と、院長の声が部屋から聞こえた。
 勇者や聖女が助けてくれない?
 孤児たちを?
 だって、今、私が助けようとしている手を拒んだじゃない。話すら聞いてくれなかったのに。
 なぜ、私の話は聞いてくれないのに、勇者や聖女には助けを求めようというの?
 意味が分からない……。
「もう、来ないでください。来ても通すなと言われましたので」
 門の外に出ると、黒い服の女性の一人が私に告げる。
「待って、話を聞いて、院長に伝えてほしいの、それくらいいいでしょう?」
 背を向けた黒い服の女性は、そのまま去っていった。
 ど、どうしよう。
 せっかくいいアイデアだと思ったのに。
 話も聞いてもらえなかった。

 王都へと続く壁の扉をくぐる。
 そうだ。この兵たちは孤児院出身だと言っていた。
「院長に話したいことがあるんだけれど、話も聞いてもらえなかったの。あなたたちから話をしてもらうことはできる?」
 兵が首を横に振った。
「出身者が孤児院に足を運ぶのは禁止されてるんです」
「え?なぜ?」