反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

 つられて、私の顔も赤くなる。

「じゃぁ」
 リュートさんが出て行った。
「だー、だ」
「あ、ははは天…」
 何してるんだろうね、私たち……。
 ポカポカと火照る頬。
 私たち……は違うか。何してるんだろうは”私”か。いい年して、旅先のアバンチュールじゃないんだから……。
 リュートさんが賢者に会って水車の作り方を教えてもらっている間……。
 まずはおむつ作りだ。
 ヨリトと朝食を済ませる。
「旦那はどうしたんだ?」
 宿のご主人に尋ねられる。旦那ってやっぱりリュートさんのことですよね。
「しばらく、仕事で王都を離れるんです。えっと、1か月くらいその……ここで待ちたいので、泊めていただいてもいいですか?」
「ああ、それはもちろん構わないよ。アンナも話し相手も出来て助かるよ。ずっと部屋に子供とこもりっきりだったころよりずいぶん表情が明るくなって」
 うん。分かります。
 育児の話ができる相手がいるかいないかって大事ですよね。もちろん、こうしたほうがいいああしたほうがいいっていう上から指導タイプの人はいない方がいいですけど。わかるー、そうだよね、なんかうちはこうしてるよーって話せる人は大事。と、赤ちゃん交流会に妹といった時に思いました。
「おはようございます」
 昨日と同じ兵に軽く会釈をして孤児院へ向かう。
 孤児院の門で、紐を引っ張るのを一瞬ためらう。
 また、あの子たちを見なければいけない。子供たちのあの……飢えた体を見るのは辛いものがある。心の奥が痛くて仕方がない。
 だけど、そんなことは言ってられない。
 紐を引っ張れば昨日と同じように奥で鈴の音が聞こえ、しばらくして子供が一人出てきて、院長室に案内される。
「今日は一人ですね。気が変わったのでしょうか」
 ヨリトを見る。
「今日伺ったのは、こちらにいる子供たちの件です。お金を寄付し続けることはできないけれど、子供たちにはもっと食事をとらせてあげたい。それで」
 50代の女性。
 子供たちほどではないけれど、ずいぶん細身の院長が立ち上がる。
「余計なことはしないでちょうだい」
 憎しみのこもった目を向けられる。
「話を聞いてください。一時的に食事を得られるというような話じゃなくて」
「帰ってください!」
 院長が、立ち上がり私の背中を押し、部屋から出そうとする。