ラインが鳴る。



ぼおっとしたあたまで



リビングのソファで横になっていた



アラタ。



熱が出たのなんて、久しぶりだ。



携帯を手に取る。



萌から



…は?



家の前にいる?



?!



アラタがドアを開けると



うちの家の前にマジで萌がいる。




「アラタくん!



大丈夫?」



「萌。



何で?」



「奏ちゃんからLINEきて



『緊急!アラタがピンチ!』



って、『倒れてるかも』って



とりあえず飲みものとか



薬買ってきたんどけど」



萌がビニール袋を挙げてみせた。



「大丈夫?


早く横にならなきゃ、」




……っ奏ーーー!



どんな爆弾プレゼントくれんだ!



アラタが心の中で叫んだ。



心配そうにアラタを見上げる萌。



はーっ…。



「…上がる?」

 

熱で蒸気した肌でアラタは言った。



おれの家のリビングに



萌がいる。



飲み物用意したり、



何か、食べ物も買ってきてくれてる。



そんな萌の様子を



リビングのソファから横目で



アラタは見てた。



息きらして、おれんとこきたりして



大丈夫?って、心配そうに



オトコひとりの家に上がって…。



もー、萌っ。



ボーッとして、そんなこと考えてた

 

アラタのおでこに



萌の手がふれた。



「や。


大丈夫だから」



アラタは思わずその萌の手を


避ける。



「奏が大げさに言っただけだよ。



たいしたことない」



ごめん。萌。



おれ今

 

リミッターが効いてないんだ。



やばいよ?



萌。



触んないで。




「アラタくん。何か食べた?



食べれそうかな」



おれに冷たくされたのに、



そんな風にまだ心配してくれる萌。



アラタは表情を隠すように



額にかざした手の下から



やっと、声を出した。



「…萌。ほんと、大丈夫だから



あんま居たら感染るよ。



もう、帰りな」



「…でも、



あ、汗かいてる。



着替えないと、タオルと着替え」



立ち上がりかける萌に



「っ、萌!



…帰れって」



ちょっと、きつめの声が出たけど



これは…



おれの優しさだよ。



何も言わない萌。



アラタはつむっていた目を開いた。



萌はアラタのそばにしゃがみ込んで




アラタのシャツの袖を



キュって軽く握っている。




「…いいもん。



うつったっていいよ。




心配なんだもん。



帰りたくない」




…なんで



そんなこと言うんだよ。



思わずアラタの手が 



萌の手をつかむ



「アラタくん?」



ガバって、身体を起こしたおれに




引き寄せられて、軽くソファに



お腹が押し付けられたような格好に



なった萌。




萌の瞳はおれの目の前。




萌がびっくりした瞳で




真っ直ぐ俺を見るから



思わず俺の手は萌の顔に



触れたけど。



おれはいつもみたいに



なるようになるなんて



手が出せなくて、



大切なものは



こんなにも



固まっちゃうもんなんだなって



はじめてきづく。



そんな俺の




〝オス的気持ち〝なんて



知りたくないおれの好きな子は



俺をみつめたまま。



がんばって、



いつもの



オトコトモダチなおれを探してる?



バカだな。




どこから間違ったのか



最初からか。



でも、トモダチに成れていなければ



一緒にいれることもなかっただろ?



まだ、そばにいていいって



嫌われてない。



大丈夫って



安心したい。



だけど、



それじゃ、苦しいって



投げ出したくなる自分もいるんだ。



萌との"トモダチ"って



大事で



便利で



大切で



残酷だな。



心が



焦げそうだ。



なのに、



一瞬でキスされちゃう距離にいるのに




逃げない萌に。



「萌…。



キスして」



自分は



動けないくせに、そんなこと願ってみる。




おれ、何言ってんだ。



「…なんてな」そう言って、



笑いにしようとしたアラタのクチに



身を乗り出した



萌のくちびるがふれた。







え?



ほんとに触れるだけのキスだったけど…



今、



キスした?



びっくりして固まってるアラタの



目の前で、




急に我に帰ったように




萌が真っ赤になった。




萌は何も言わず、立ち上がって



慌ててカバンを胸に抱え



玄関に逃げていく。