アラタくんがせっかく学校まで




来てくれたのに




ほんとは、嬉しくて



嬉しくて



終わるまで



もうー。先生、



早くホームルーム終わってーって



心の中で、叫んで



学校の前の坂を、



駆け降りたんだけど。




声が聞こえた。



『あのひとイケメンじゃない?』



『やば。タイプ』



『あれって…アラタくんじゃない?



ほら、若業の』



『ほんとだ。だれ待ち?』




『ね、話しかけてみる?』



『え。うちの学校に?彼女いるの?』




なんて、まわりの声。



増本さんの言ってたことも思い出されて。



やっぱりアラタくん



モテるんだ。




何か、何でだろう。




萌の足は止まってしまった。



モヤモヤ。



変なの。



なんで?



わたし、落ち込んでるの?



何なの、自分?



この前から自分で、わかんない感情に



振り回されて…。



「萌、どうしたの?」っていうような



表情のアラタくんに。



「うううん」



なんでもないよ。



って、首振るしかできない。



だって、言えるはずない。



みんながアラタくんのこと



そんな風に見るのがイヤなんて。



なんなの、わたし?



なに様なの?



せっかく、来てくれた




アラタくんに



また、気まずい思いさせて



こんなめんどくさい自分。



だめじゃん。



そう思って、アラタくんに話しかけようと



したとき。



「あっれー。アラタじゃーん」




女の子の声。



バッ。



女の子がアラタに抱きついた。