グランドではまるバツクイズが、




始まって




クラスを優勝に導くべくアラタが奮闘中。






そのヤロウノリのクイズに




横にいる紅葉が言う。




「…お下品」





その言い方に奏が笑って言う。





「男の子だもん」




健気に頑張るアラタに




萌の前で…このエロクイズ。



「アイツ。内心泣いてっかもな」




「何が?どういう意味?」




奏の顔を覗きこんで




ハテナ顔の紅葉。




下から覗き込んでくる紅葉の表情は



無防備で。



さっき、簡単にパイセンに





連れてからそうになってた紅葉を




思い出す。




若業が



おれらが嫌いって




パイセンのせいかよ。



奏は



突然




「泣いた?」




紅葉に



そう、聞いた。




〝パイセン〝




そんなに…



好きだったわけ?




脈絡もない質問なのに




紅葉は何のことを聞かれているのか





わかったみたいで。





少し黙ってから、言った。




「…もう、忘れたよ」




そう言って、グランドに視線を



向けた紅葉。




奏が口を開きかけたとき




ブーン。奏のポケットで携帯が鳴る。




「なに?



おー、知ってる。見てる」




話始める奏。



携帯をとるひょうしに奏のポケットから



落ちた紙を紅葉が拾う。



数枚の紙にはかわいい字で




携帯番号とミサとかアリサとかって



名前。




それに気づいた奏が




「おーわかってるって。けど、



アラタが取るからもう大丈夫じゃね?」




なんて、話しながら




何気ない様子でその紙をとると




グシャってつぶして、



ちょうど近くにあったゴミ箱に投げた。




『紅葉ちゃんも捕まえた?



よかったじゃん。




これ、アラタが獲らなかったら




店でラストスパートだかんね!?




紅葉ちゃんとバックレるとかなしだよ?!』





耳元でコウタの話は続いてるけど




奏は




紅葉の横顔見てた。




少し眉毛を寄せて視線を落としている




紅葉。





〝もう、忘れたよ〝



なんて、



うそつけよ。



…そんな顔してるくせに。






「わーかったよ。はいはいー」



電話を切った奏。




グランドでは



アラタが着々と勝ち進む。




「おおっ。アラタ。すげえじゃん。



このまま優勝だな」



そんな奏に



「…奏ちゃんは?」







なに?




紅葉の静かな声。




「奏ちゃんは



泣いたこと、ある?」





紅葉が言った。



ん?




泣く?恋愛で?




「ない」キッパリ答える奏。 




「でしょうね」



紅葉の、その言い方に




「なんだよ?」



奏が聞く。



なに、急に機嫌悪くなってね?



「べつに。」



明らかになんか、



怒ってんじゃん



「うそつけよ」



紅葉の態度を流さない奏に




「べつに。



…ただ、



私のことなんか、『バカだなあ。』って




思ってるんだろうな。って思っただけ。」



「は?何だよ、それ」



奏が尋ねるのに



紅葉はアラタを見てるのか、



下を向いたまま、




こっちを見もしねえ。



あー…でたでた。




女って急に、機嫌悪くなったりするよな。



何なの?地雷がわかんねえんだけど。



イミフ過ぎる。




「くーれは」呼んでみても



こっちを向かない紅葉。



奏に見えるのは



拒絶しているような横顔だけ。