萌が悲しくなっている横で




浅めのブラックのオープンショルダーの



トップスに



濃いめのデニムショートパンツ




高めの位置でまとめられた黒髪ポニテ。




その黒髪がまっすぐおりて肩の位置で揺れてる。



黙ったままの紅葉が見つめていたのは




コウタと一緒に



女の子たちに声をかけまくる奏。



暑いのか、ウチワ片手に



テイシャツ姿。



呼び込みなのかな。



女の子に声かけては、



縁日のとこに連れて行ってる。



女の子たちは奏の言葉に



きゃーっって大きな笑い声。



奏が捕まえた女の子たちに



肩まわして



耳元で何か言ってる。



また、オンナの子たちが笑った。



なにその…愛想の良さ。



タイプの子とか?



私にはそんな笑ってくれないじゃん。



しかも、すっごいイチャイチャしすぎ。



奏のその距離の近さに



ドキってする。



ずっと、わたしが悩んでたことは



考えて、迷ってたことは



何だったのか



わからなくなるくらい…。





オトコって、不思議。



自分の欲求に正直で



単純で



複雑で




何を考えているか、ちっともわからなくて



好きじゃなくても



キスもできる。



きっと、わたしがぐちゃぐちゃ考えてる




3分の1も



奏ちゃんは



考えたことないでしょ?



ほんとは



今日、奏の顔見るの



こわかったよ。




何でしたのかわからないキスに




ムカついたり、悩んだり




あの日の奏ちゃんの背中を




あの私を連れて走ってくれた疾走感を





忘れられなくて




何度も思い出したりするのは…




わたしだけなんだね。



だけど



それなのに…




ほんと…



あーっっ。



わたし、どうかしちゃってるよね。




奏ちゃんも私が



悩んでるくらい




少しは戸惑ってればいいのに。



そう思ってたのに






「ムカつく」



紅葉がポツリ言った。




紅葉のつぶやきが聞こえていない萌。




「そういえば、奏ちゃんって




奏司郎って言うんだって。




でも、その名前嫌いらしくって。




小学校のときにからかわれたとかで?




呼んだらマジギレするから




誰も呼ばないんだって。





何か…意外だよね。



奏司郎って。イメージないね」




ひとりごちる萌。







…へー。そうじろう。