バイト終わりに



身体より気持ちが焦って



ドアを開ける。



大通りから響く車の音が頭に飛び込んできた。



駐車場の出口付近で



わたしを待つ



アラタくんの後ろ姿。




若業の制服にロゴの入った黒のバックパック姿。



何を見てるのかな?



アラタくんの視線は大通りを向いている。



アラタくんって



肩はばが広くて、がっしりしてる。




短めの茶髪のえりあしがかわい。




背高くて…177くらい?



足長っ。



少しずつアラタに近づいてた萌。




いつの間にか、足が止まって




マジマジとアラタを見つめちゃってる。




萌の視線に気づいたのか



アラタが振り返った。




基本、上がり気味の




アラタの口角が




もっと、キュって弓なりに上がって




アーモンド型の瞳がもう笑ってる。





やっぱり



すごい、笑顔かわいいし。




「お疲れ」



アラタが言った。



「待たせてごめんね。



…いつもだけどっ」



萌が言う。



バイトの帰り。




いつものように萌を待ってくれて



送ってくれるアラタ。



でも、何だか



海に行ったくらいから



今みたいにアラタくんのこと



見つめてしまう自分がいる。



気付いたら、



アラタくんって、話し方柔らかいな。



とか、



もう瞳が優しそうだもんな。



とか



いちいち考えちゃってる自分がいる。




なんて、また



ぼーっとしてたから



アラタが



「萌?


どうしたの。最近何か



疲れてんの?」



覗き込んで、見つめてくる。



…こんな風に、目見つめるの




クセなのかな…。



ほんとは、男の子とこんな距離が



近いなんて



今までの自分では、考えられない



ことなんだけど。



…なんて、すぐもの思いにふけるから!



アラタくんが変に思ってるじゃん。



「うううん。全然っ。大丈夫。



ただ…」



「うん?」



ああ、言いかけてしまったから…




「何か、何で



アラタくんだと、こんな平気なんだろ。



って、思って。」



素直に言ってしまう。



わたしの中でオトコって



胸しか見てないみたいな、



エロエロエロいだけの存在だったのに。



なのに、アラタくんは



そんなイメージと重ならなくて



何か一緒にいて…



こんな楽しいなんて。




「アラタくんは



男の子っぽくないから



安心なのかも!」




萌はひとり納得したように




笑って言った。



そしたら、



「…いや。おれ



若業だし?



そこらへんのやつと違いは



ないっていうか。



決して



オトコらしくないってことは」



って、焦ったように



言いかけるアラタに







「えー関係ないよ。



どこの高校とか



男なんて



みんな同じだから」



急にすごい冷たい声の萌。



「…そうっすか」



「ちなみに



おれも普通に



オトコなんだけ」



何とか言いかけるアラタに。



「だから、アラタくんは別だよ!」



褒めたつもりの萌の揺るぎないひと言。



満面の笑顔つき。