バス停でバスを待っていた紅葉。



ベンチから立ち上がって、歩き出す。



なんとなく、歩きたくて。




足取りは重くって、




〝トボトボ〝って効果音が一番あいそ?




そんな自分がますます嫌で




そのわけを自分に問いつめたくない




…逃げたい気分。




でも、こんな意地っ張りな自分さえ




誤魔化せないくらい。



ズキズキ




胸が痛む。







ツンツン頭の純くんの背中を追いかけて



萌と2人で



わくわくしてた。




探偵気分で




ハラハラとかドキドキとかしちゃって




奏ちゃんに会うと思ったら、




緊張するのに




奏ちゃん、どんな顔するかな



とか



今から



会えるんだ。



…会いに行っちゃうんだ。



なんて、考えたら



なんか胸がキュってなったりして




そう、



勝手に盛り上がっちゃってた。




ハア。



自分に都合いい〝シーン〝しか




想像できてなかったんだな。




綺麗なお姉さんとイチャコラしている



奏ちゃんに




現実パンチ




いただきました。










何を期待していたの?




奏ちゃんも



…そうかもなんて。



奏ちゃんみたいなオトコの子のこと




わかってるでしょ?




思わせぶりな感じしても




…違うんだよ。




勘違いしちゃダメじゃん。




だいたい私



嫌われてたんじゃん!




都合よく忘れすぎだよ…。




「紅葉っ」



え?
 


奏ちゃん?



…なんで?



何で



追いかけてくるのよ。




そのまま一歩



()を進めた紅葉の




足は止まらなくて




「くーれは。



紅葉ちゃん」



それでも



立ち止まらない紅葉に



声をかけ続ける奏。



ポタ。



奏の汗がアゴから落ちる。



そんな汗かくくらい



走ってきたの?



やだ。



また、そうやって…



私を勘違いさせる…



やめてよ。



紅葉は立ち止まった。



自分に言い聞かせるみたいに



紅葉の口から言葉がでた。



関係ないとか…



「他の男の子と遊んでもいい」



なんて、何でこんな言葉が出たのか




自分でもわからなくて。




もう、何かぐちゃぐちゃだっ。



でも、口にしてすぐ後悔するようなこと




言っちゃったって



自分でも思ったのに。



奏ちゃんが、怒ったみたいに



腕を掴んだから



紅葉は



思わせぶりみたいな、




うううん。



〝あてつけ〝




言った自分が恥ずかしくて




走って、逃げた。



逃げ出した。




…っ。



やだ。



だから




奏ちゃんっ。




追いかけてこないで!



ハア。



どちらの吐息か




わからない音が聞こえて。



「…から、足速えって!」




そんな言葉と一緒に




奏の手が



思わず力強く




紅葉を引き留めたから



その引力のまま



紅葉は奏の胸の中に



ぶつかるみたいに



飛び込んだ。



一瞬で



パーソナルスペースに



入ったふたり。



今日



はじめて



2人の視線がぶつかった。